浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

常楽(7)/小説「新・人間革命」

 

【常楽7】

 会談に同席していたティビーエス・ブリタニカの吉田稔社長が、「インドの問題に関連して、私からもお伺いしたいことがあります」と言って、ガルブレイス博士と山本伸一に質問した。同社は『不確実性の時代』など、博士の邦訳出版を手がけてきた会社である。

 吉田社長の質問は、先進工業国と発展途上国の経済水準の格差、すなわち〝南北問題〟を解決していくために、日本は何をなすべきかということであった。

 博士は、即座に答えた。

 「世界の富める国となった日本には、その富の一部を貧しい国に資本のかたちで供与する道義的義務があると思います。それが、日本が途上国に貢献する第一の方途でしょう。

 第二に、農業による貢献が大事です。特に日本は優れた米作技術をもっているので、米作指導に力を入れてはどうかと考えます。

 アジア諸国の人びとにとっては、同じアジア人である日本人には親近感もあり、米作指導も受け入れやすいのではないでしょうか。これは、極めて現実的な貢献の道です。

 貧しい国々にとって切実な問題は、米、麦などの食糧や水を、どうやって確保するかなんです。まず、その国の人びとが本当に必要としているものは何かを考えることです。

 山本会長のご意見を伺いたい」

 「今、博士が語られたことは、非常に重要です。ただし、経済次元の物質や技術の一方的な援助をし続けていくだけでは、国と国とが単なる利害関係になったり、援助を“する国”と“される国”という上下の関係になったりすることが懸念されます。また、その国の国民のプライドや、自力性を失わせてしまいかねません。

 したがって、相互の信頼関係を築いていくことが不可欠です。そのためには、人間対人間を基調とした教育・文化の恒久的な交流が必要です。それを忍耐強く、十年、二十年、五十年と行う以外に永続的な信頼の道は開けないと思いますし、これまでも私は、そう訴え抜いてまいりました」

【「聖教新聞」2016年(平成28年)1月9日(土)より転載】


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