浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

常楽(10)/小説「新・人間革命」

 

【常楽10】

 山本伸一は、さらに、仏法の役割について論じていった。

 「政治も、経済も、科学も、本来、すべてが人間の幸福を追求するものですが、それらは制度や環境的側面など、人間の外側からの幸福の追求です。それに対して、宗教は、人間の内面世界からの幸福の追求に光を当てています。人間の内面の確立と、外側からの追求のうえに、人間の幸福はあるといえます。

 あらゆる学問も、機構・制度も、それを生み出し、つくり上げてきたのは人間です。したがって、社会や環境の改革も、その主体者である人間の内面を改革することが肝要です。そこに高等宗教、なかんずく仏法の役割があると、私は考えております」

 ガルブレイス博士は、長身の体を乗り出すようにして伸一の話に耳を傾けていたが、大きく頷くと、語り始めた。

 「重要な話です。会長が言われたように、すべては、人類の幸福のためにある。そこにもう一つ補足させていただければ、今日、政治、経済、科学等は、それぞれの分野で急速な進歩を遂げましたが、いつの間にか、手段が目的と入れ替わり、幸福の追求という根本目的が忘れられています。私は、そこに、大変に危機的なものを感じています」

 「そうです。おっしゃる通りです!」

 「私は、ものの考え方の体系をかたちづくる目的意識を一つにし、すべてを人間生活の核心である幸福の追求、平和の追求へと立ち返らせなければならないと考えています。

 私は、経済学者として、少しでも人間の幸福に寄与する努力をしていきたいと思っております。また、会長のお話を聞いていて、私も、ぜひ一緒に仏陀の国・インドへ行ってみたくなりました。この話の続きは、いずれ、サールナートででもできれば幸せです」

 サールナート鹿野苑といわれ、成道した釈尊が最初に説法をした地として知られる。

 約二時間にわたる会談は、多くの意見の一致を見た。誠実な対話のあるところ、魂の共鳴が生まれ、人間の絆がつくられていく。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)1月13日(水)より転載】


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