浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

常楽(11)/小説「新・人間革命」

 

【常楽11】

 ガルブレイス博士は、会談の翌年、総合月刊誌『文藝春秋』の四月号に、「ガルブレイスのニッポン日記」(訳・杉淵玲子)と題する一文を寄せた。そのなかで、山本伸一との会談の内容についても触れていた。

 「中国やソ連の問題、核兵器の管理、貧しい国々に対する援助、この面で日本が果たすべき責任などである。聞かれては、聞き返し、結局、意見はほぼ一致であった」

 そして、伸一が、特に「アメリカと中国の関係」を憂慮していたと記している。

 二人の語らいに関する記述は、こう締めくくられていた。

 「(会長は)心から仏教を信じて、尽きざる生命の本流へ立ち戻り、平穏この上もない悟りの境地へ到達するよう熱心にすすめてくれた。私は信心を誓い、彼がその内、インドへも行くというので、いずれまた、サルナートでこの続きをと、いささか意味深にうなずき合った。見送りにも、会員たちが勢揃いして、出迎え以上に盛んな拍手、ただもう感激の至りだった」

 博士と伸一の再会は、インドでこそ果たせなかったが、一九九〇年(平成二年)の十月、再びガルブレイス夫妻が聖教新聞社を訪れ、語らいが行われたのである。

 この会談では、平和、経済、二十一世紀に向けた新しい国際秩序への展望、各国指導者との交友のエピソードなどを、時のたつのも忘れて語り合った。

 一回一回の対話を大切にして、誠実な語らいを重ね、互いの心が耕されていってこそ、友情という果実は実る。

 九三年(同五年)九月、伸一は、「二十一世紀文明と大乗仏教」と題して、ハーバード大学で二度目となる講演を行った。その折、ガルブレイス博士は、多忙を極めるなか、わざわざ駆けつけて、講評者(コメンテーター)を務めてくれたのである。

 「私たちが希望し、願望している『平和実現への道』を示した講演」であり、仏教の思想に「平和」を展望する魂を感じる――と。

【「聖教新聞」2016年(平成28年)1月14日(木)より転載】


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