浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

常楽(23)/小説「新・人間革命」

 

【常楽23】

 「母の曲」の歌詞が発表されると、婦人部員の間から歓声と拍手が起こり、しばらく鳴りやまなかった。ようやく拍手が収まると、山本伸一は言った。

 「婦人部の皆さん方の日夜のご活躍に、心から敬意を表して作らせていただきました」

 さらに大きな拍手が広がった。

 伸一が、「母の曲」の作詞をしたのは、前夜のことであった。この日、創価婦人会館(後の信濃文化会館)で婦人部の方面幹部らと懇談した。

 功徳の体験に沸き返る組織の様子や、宗門の僧が理不尽な学会批判を繰り返すなかで、健気に友の激励に走る婦人の活躍の模様などが、次々と報告された。その時、新しい婦人部歌を発表したいという要望があった。

 婦人部では、この年六月に創価婦人会館が開館した記念に、新婦人部歌を作成しようということになり、一応、婦人部有志による、「母の城」と題した歌詞の案ができていた。

 その案を見せられた伸一は、感想を述べた。

 「この創価婦人会館を『母の城』として詠っているが、『母の城』を、ここだけに限定する表現は、避けた方がいいように思う。

 婦人部は、何百万人もおられる。しかし、これまで婦人会館に来られたのは、六万人ぐらいだと伺っています。まだ大多数の婦人部員が、直接見ていないだけに、ここが『母の城』といわれても実感が湧かないでしょう。

 むしろ、皆さんのご家庭を、『母の城』と、とらえるべきではないでしょうか。日蓮大聖人は『法華経を持ち奉る処を当詣道場と云うなり此を去って彼に行くには非ざるなり』(御書七八一㌻)と仰せになっている。

 つまり、日々、信心に励んでいる場所こそが、成仏にいたる道場であるというのが、本当の仏法の教えなんです。自分の今いる場所で、崩れることのない幸せを築き、わが家を寂光土へと転じていくんです。婦人部の皆さんには、それぞれのご家庭を『幸の城』『母の城』にしていく使命があるんです」

 幸福の実像は、わが家庭にこそある。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)1月28日(木)より転載】


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