浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

常楽56〈小説「新・人間革命」〉

 


【常楽56】 法悟空 内田健一郎 画 (5744)

 泉州文化会館は、この一九七八年(昭和五十三年)の、十一月五日に落成したばかりの会館である。
 泉州は、タマネギなどの野菜栽培や、タオルなどの繊維工業が盛んである一方、ベッドタウン化が進んでいた。また、泉州沖には関西新空港(関西国際空港)を建設する計画があり、日本の新たな玄関口となる可能性の高い、未来性に富んだ地域でもあった。
 午後四時前、山本伸一は、二十一年ぶりに泉州の地を訪れた。会館に到着し、車を降りると、出迎えてくれたメンバーに言った。
 「すばらしい会館だ。泉州は勝ったね!」
 会館の玄関にも、庭にも、黄・白・紫などの色をした菊の大輪や懸崖作りが、所狭しと飾られ、夕日に映えていた。
 「美事な菊だね。真心が胸に染みます」
 菊は、千二百六十五鉢あるという。各大ブロック(後の地区)の有志が丹精込めて育てたものだ。
 菊の花言葉は、「清浄」「高潔」である。それは、そのまま、泉州の同志の信心、生き方を表現しているように思えた。
 彼は、泉州文化会館の初訪問を記念して、楠 や 桜などを植樹し、集って来た同志らと、記念のカメラに納まっていった。
 伸一の目に、見覚えのある幾つもの顔が飛び込んできた。あの“大阪の戦い”で共に汗を流し、苦楽を分かち合った同志たちである。
 「久しぶりです!」
 彼は足早に歩み寄って、握手を交わした。
 当時、青年部の室長であった伸一が、泉大津市で活動の指揮を執った折、一緒に食事をしながら懇談した、二十数人の人たちであった。その日は皆、大奮闘し、指導会が 終 了した時には、誰もが空腹を覚えていた。そこで伸一は、会場の別室で、皆と食事をしながら、懇談することにした。
 彼は、一人ひとりと言葉を交わし、生涯、不退の信心に励むよう訴えていった。この時の「頑張りまっせ!」との誓いを、皆、忘れなかった。誓いは幸福への種子となる。

【「聖教新聞」2016年(平成28年)3月8日より転載】


☆彡------☆★☆★☆*------彡☆o☆:*:.♪☆★☆*------☆彡