浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

常楽六十四/小説「新・人間革命」〉

 


【常楽六十四】法悟空 内田健一郎 画 (5752)

 山本伸一は、勤行会であいさつを終えると、メーン会場に入れず、別室でスピーカーから流れる音声を聴いていた人のもとへと急いだ。そして励ましの言葉をかけたあと、ピアノに向かった。
 「私は、ピアノは上手ではありません。しかし、皆さんが喜んでくれるなら、弾かせてもらいます。できることは、なんでもやらせていただこうというのが、私の思いなんです。
 皆さんは、健気に、一生懸命に、広宣流布に邁進してくださった。そのために、さんざん悪口を言われ、ひどい仕打ちを受け、苦しんでこられた。それを聞くたびに、身が切られる思いをしてきました。
 今日は、最愛の同志を讃え、労をねぎらう意味で、弾かせてもらいます」
 「うれしいひなまつり」、続いて「夕焼小焼」の軽やかな調べが流れた。
 弾き終わると、「次は何がいいの?」と皆に尋ねた。すかさず、「熱原の三烈士」という声があがる。彼は、“勇気の人に! 正義の人に! 幸福の人に!”と祈り念じながら、鍵盤に指を走らせた。
 さらに、一曲、二曲と演奏するうちに、皆の心は一つに解け合っていった。
 「これでいいね。さあ一緒に出発しよう!」
 それから伸一は、役員の青年に言った。
 「もう、ほかには、お会いしていない人はいないね。いたら必ず言うんだよ。せっかく来てくださったのに、申し訳ないもの。
 事故を起こさないための備えは万全でなければならないが、威圧的、権威的で冷たい対応になってはいけないよ。人間性を否定する宗教の権威主義、権力主義と戦ってきたのが、創価学会なんだから。知恵を絞り、来た方に喜んでもらえる対応をしていくんです」
 十一日夜の勤行会でも、伸一は、徹して皆を励まし抜いた。また、懇談や個人指導にも余念がなかった。“もうこれで、この地には来られないかもしれない”との思いで、激励に次ぐ激励を重ねた。すると、不思議なことに疲れは消え、力が湧いてくるのである。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)3月17日(木)より転載】


☆彡------☆★☆★☆*------彡☆o☆:*:.♪☆★☆*------☆彡