浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

力走 二〈小説「新・人間革命」〉

 


【力走 二】 法悟空 内田健一郎 画 (5759) 

 山本伸一は、記念提言で、「地方の時代と創価学会の役割」にも言及していった。
 そして、社会に生きる限り、「私ども一人ひとりも、地域に深く信頼の根を下ろし、人びとの心のひだの奥にまで分け入り、苦楽を共にし合う決意がなくてはならない。そうした地道な精神の開拓作業のなかにしか広布の伸展もないし、また、真実の地域の復興もあり得ない」と訴えたのである。
 また、学会員は、驚くほどの辺地にあっても、喜々として広宣流布への情熱に燃えて活躍していることに触れて、こう述べた。
 「一個の人間を大切にするといっても、具体的には、こうした恵まれない、最も光の当たらない人びとのなかに、率先して入り、対話していくことが、私ども幹部に課せられた、当面、最大の課題といえましょう。このことは、即『地方の時代』の先駆けであり、人間救済の仏法の根本精神からいっても、当然の道なのであります」
 次いで環境問題について論じるにあたり、巨大産業による公害などもさることながら、最も大きな環境破壊をもたらしてきたものは、今も昔も戦争であると語った。
 その戦争が人間の心の中から始まるように、“外なる環境破壊”は、いつの時代にあっても、本源的には人間の内面世界の破壊と不可分の関係であることに論及。ヨーロッパ諸国を中心に発達した近代科学の進歩の根源には、「自然への支配欲や征服欲、すなわち人間のエゴイズムの正当化」があると指摘した。
 もとより伸一は、人間のそうした姿勢が、半面では、刻苦や努力、挑戦などの力となり、また、近代科学が飢餓や疾病の克服に大きく貢献してきたことも、よく認識していた。
 しかし、科学技術に主導された近代文明が、エゴイズムという内面世界の不調和やアンバランス、換言すれば、“内なる環境破壊”に発している限り、そのエネルギーは、歪んだ方向へと向かわざるをえないことを、彼は訴えたのである。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)3月25日(金)より転載】


☆彡------☆★☆★☆*------彡☆o☆:*:.♪☆★☆*------☆彡