浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

力走 三〈小説「新・人間革命」〉

 


【力走 三】法悟空 内田健一郎 画 (5760)

 山本伸一は記念提言で、「エゴイズムの正当化」によって科学技術の発達がもたらされたが、そうした人間中心主義は、公害の蔓延等の事実が示すように、既に破綻をきたしていると述べた。そして、東洋の発想である自然中心の共和主義、調和主義へと代わらなければ、環境問題の抜本的な解決は図れないと訴えたのである。
 東洋の英知である仏法では、あらゆる存在に、その固有の尊厳性を認めている。さらに、自然環境を離れては、人間生命が成り立たないことを、「依正不二」として示している。これは、生命活動を営む主体たる正報と、その身がよりどころとする環境である依報とが、「二にして不二」であることを説いた法理である。
 つまり、正報という“内なる一念”の変革が、必然的に依報である自然環境、外部環境への対し方と連動し、そこに変革をもたらしていくという、優れて内外呼応した共和、調和への哲理といえよう。
 伸一は、記している。
 「こうした考え方を根本にしてこそ、今まで支配、服従の一方通行であった人間と自然との回路は、相互に音信を通じ、人間が自然からのメッセージに耳を傾けることも可能となるでありましょう。また、人間と自然とが交流し合う、豊かな感受性をもった文化、精神をつくりだすこともできるはずです。
 この発想を根底にするならば、自然に対する侵略、征服の思想から、共存の思想、さらには一体観の思想への転換も可能であると信じております」
 彼は、戦争をはじめ、核の脅威、自然・環境破壊、貧困、飢餓など、人類の生存さえも脅かす諸問題の一つ一つを、断固として克服しなければならないと決意していた。そのために、仏法という至極の英知を広く世界に伝え抜いていくことを、自らの“闘い”としていた。そして、日々、人類の頭上に広がる破滅の暗雲を感じながら、“急がねばならぬ”と、自分に言い聞かせていたのである。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)3月26日(土)より転載】


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