浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

力走 四〈小説「新・人間革命」〉

 


【力走 四】法悟空 内田健一郎 画 (5761)

 記念提言は、核心に入っていった。
 山本伸一は、今や世界は一体化しており、なかでも自然・環境破壊は、一国や一地域を越えて、全地球に壊滅的な影響をもたらすと警告を発した。そして、各国の英知を結集して、全地球的規模において人類が生き延びる方策を研究、討議し、具体的な解決策を見いだしていくべきであると主張。そのための話し合いと取り決めの場として、「環境国連」の創設を提唱したのだ。
 また、近代科学の技術を駆使した開発によって経済的繁栄を享受してきた先進諸国と、その恩恵に浴さず、飢餓と貧困にあえぐ開発途上国、つまり「南・北」の問題にも言及。両者の調和、共存共栄を図っていくために、開発途上国の犠牲のうえに繁栄を築いてきた先進国は、とりわけ厳しい試練を自らに課していく道義的責任があると指摘した。
 さらに、環境破壊をもたらした大量消費文明を築き上げてきたのは、人間の欲望のとめどなき拡大であり、その欲望を限定、抑制することこそ、最重要の課題であると訴えた。
 「そのためにも、そうした英知を開発する哲学、なかでも宗教の重要性を訴えたいのであります。
 “もの”から“こころ”へ、物質至上主義から生命至上主義へ――すなわち、御書に仰せの『蔵の財よりも身の財すぐれたり身の財より心の財第一なり』(一一七三ページ)との価値観が、今ほど要請される時代はありません。
 この価値観が、人びとの心に定着していく時、人類のかかえる大きな問題も、いかなる試練があろうと、もつれた糸をほぐすように、解決の方向へ進むと、私は確信しております。“内なる破壊”が“外なる破壊”と緊密に繫がっているとすれば、“内なる調和”が“外なる調和”を呼んでいくことも、また必然であるからであります」
 仏法の視座からの、伸一の叫びであった。
 人類の直面する複雑で困難な問題も、仏法という生命の根源の法に立ち返るならば、必ずや、新たなる創造の道が開かれる。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)3月28日(日)より転載】


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