浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

力走 六 〈小説「新・人間革命」〉

 


【力走 六 】 法悟空 内田健一郎 画 (5763)

 山本伸一は記念提言で、「恵まれない、最も光の当たらない人びとのなかに、率先して入り、対話していく」ことこそ、一個の人間を大切にする具体的実践であり、それが「即『地方の時代』の先駆け」となると訴えた。
 その言の通りに彼も行動を開始したのだ。
 “広布の新潮流は地方にこそある。これまで、あまり訪問できなかった地域へ行き、会うことのできなかった同志と会おう!”
 キューバの師父ホセ・マルティも、「真の革命は地方で起こっている」と語っている。
 記念提言が「聖教新聞」紙上に掲載された二日後の十一月二十一日、彼は、神奈川県の戸塚文化会館で行われた学会創立四十八周年を記念する戸塚幹部会に出席。翌二十二日には同会館で、開館一周年を記念する勤行会が六回にわたって開催された。伸一は、神奈川県の大躍進、大勝利を願い、全精魂を傾けて指導を重ねた。新たな力走の開始であった。
 この二十二日、群馬県では代表幹部会が行われ、伸一が作詞した県歌「広布の鐘」が発表されたのである。
 十日ほど前、群馬の幹部たちから、伸一に、“県の新しい出発のために県歌の作詞を”との要請があった。しかし、彼には、関西指導の予定があり、引き続き、学会創立四十八周年の記念行事が控えていた。群馬の幹部は、“歌詞を作ってもらえるのは、かなり先になるだろう”と思っていたのだ。
 ところが、東京・荒川文化会館で、総会の意義をとどめる記念の本部幹部会が開催された十一月十八日、会場にいた群馬の県長のもとへ、県歌の歌詞が届けられたのである。
 伸一は、関西指導の激闘のなか、わずかな時間を見つけては歌詞を考え、この日、さらに推敲を重ねて完成させたのであった。
 彼は、“同志のために”と必死であった。
 その一念が心を強くし、力を倍増させる。
 群馬の同志は、素早い伸一の対応に感動を覚えた。しかも、学会創立の記念日に歌詞を手にしただけに、その喜びは大きかった。

 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 『ホセ・マルティ選集 第2巻』青木康征・柳沼孝一郎訳、日本経済評論社

 


【「聖教新聞」2016年(平成28年)3月30日より転載】


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