力走/四十五〈小説「新・人間革命」〉
法悟空 内田健一郎 画 (5802)
十二月七日、山本伸一は、高知研修道場で黎明の海を見た。静寂のなか、暁闇を破って光が走り、太平洋にのびる足摺半島の稜線が浮かび上がる。海原には、無数の金波が躍り、赫々たる太陽が昇る。足摺の日の出は、大自然の荘厳なるドラマであった。
後に伸一は、この時の感動を詩に詠んだ。
転瞬――
満を持したる 光彩の爆発だ
無数の黄金の矢を放ちつつ
無限のエネルギーをはらみつつ
火球の躍り出ずるかのように
日輪は
みるみる 大海を
金と銀の色に染めたり
なべての大空間を
燃えるがごとき光沢で
宝石と 飾りぬ
おお
大自然の壮大なる演出
いかに 人工の巧みを尽くそうとも
とうてい比肩しえぬ
大いなる バイタリティーのドラマ
高知研修道場より望見せし
かの足摺の日の出が
私は 私は大好きだ
日本一の
“午前八時の太陽”だ
伸一は、昇りゆく足摺の旭日が、広宣流布の天空に躍り出た創価学会の姿を、象徴しているように感じられてならなかった。
学会に偏見をいだき、その実像を見ようとしない人びとから、そして、信徒支配をもくろむ宗門の僧から、学会は、どれほど攻撃を受けたことか。しかし、われらは威風も堂々と、今日も、わが使命の軌道を悠然と進む。
哲人セネカは言う。
「空も暗くなるほど放った矢が一本でも太陽を射止めただろうか」(注)
小説『新・人間革命』の引用文献
注 セネカ著『わが死生観』草柳大蔵訳、三笠書房
【「聖教新聞」2016年(平成28年)5月17日より転載】
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