浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

力走/六十六〈小説「新・人間革命」〉

 


力走/六十六  法悟空 内田健一郎 画 (5823)

 

 高知文化会館を発った山本伸一は、十一日の午後六時前、香川県庵治町の四国研修道場に到着した。彼は、移動の疲れも全く感じさせず、元気に香川県の最高会議に臨んだ。この席で、香川県は二圏一地域本部の布陣で新出発することが決まった。
 翌十二日午後は、徳島県から代表二千八百人が集い、第一回の県幹部総会が行われた。
 伸一は、開会前、二十人ほどの青年たちと記念のカメラに納まった。一九六九年(昭和四十四年)の十月、香川県立体育館で行われた四国幹部会で合唱を披露した、「香川少年少女合唱団」のメンバーである。
 彼は、この四国幹部会終了後、幼い合唱団員と一緒に写真を撮り、こう語った。
 「今日は、全国、全世界の少年・少女部の代表という意味で記念撮影しました。
 みんなのなかから大人材が育っていくと、私は強く確信しています。十年後に、また会おう。みんな、立派な人になるんだよ」
 “十年後”――この言葉が、皆の目標となった。それから十年目に入った今、メンバーは伸一の四国訪問を聞き、互いに連絡を取り合って、喜び勇んで駆けつけてきたのだ。
 かつての小学生は、凜々しく、はつらつとした青年に育っていた。伸一は嬉しかった。
 「よく来たね! 本当に大きくなったなー」
 彼は、感慨を噛み締めながら目を細め、声をかけ、一緒にカメラに納まった。皆、この日をめざして、立派な創価の後継者に育とうと決意し、受験や就職、また学会活動に奮闘してきたにちがいない。
 決意は大成の種子である。しかし、決意を成就するには、日々の着実な挑戦と努力が必要である。勝利の実証が尊いのは、その粘り強い精進の蓄積であるからだ。
 彼は、二十一世紀を託す思いで語った。
 「負けないことだよ。真っすぐに伸びるんだ。真っすぐ伸びて、大樹になるんだよ」
 青年たちの力強い返事が響いた。そして、あの日歌った「チキ・チキ・バン・バン」と、“大楠公”の歌を、新たな誓いを込めて合唱した。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)6月9日より転載】


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