浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

清新/八〈小説「新・人間革命」〉

 


清新/八 法悟空 内田健一郎 画 (5833)

 安房由光の販売店の配達員からも、宗門僧の圧力に屈して、学会を去る人が出始めた。配達員がいなくなった地域の配達は、安房自身が行わなければならない。彼は“負けるものか!”と、自分を奮い立たせた。
 一月十一日、安房は、県北の二戸から県南の水沢まで、車で三時間ほどかけて、岩手県代表幹部会に駆けつけたのである。途中、吹雪に見舞われた。“これは、広布の道を象徴しているのだ”と思うと、心は燃えた。
 午後六時、代表幹部会の会場に姿を見せた山本伸一は言った。
 「今日は、私も愛する岩手の一員です。したがって会長は別の人にやってもらいます。
 あなたに『一日会長』をお願いします」
 教育部の壮年を指名し、自分の胸章を彼につけた。
 勤行のあと、県幹部から、この一月十一日を「水沢の日」とすることが発表された。場内は喜びの大拍手に沸き返った。
 幹部の抱負に移ると、伸一は言った。
 「私たちは、役職や肩書に関係なく、みんな平等です。同志であり、友だちです。だから、登壇者も堅苦しい話はやめて、原稿は見ないで話すようにしましょう。皆、遠くから来て、疲れているんだから、楽しくね」
 戸惑ったのは、登壇者たちである。途中でしどろもどろになる人もいた。すると、会場から声援が起こり、笑いが弾けた。
 さらに、婦人部合唱団の合唱となった。
 「歌は何がいいですか。リクエストした曲を歌ってもらいましょう」
 伸一が提案すると、「荒城の月」「春が来た」など、次々に声があがった。合唱団は、慌てることなく、はつらつと歌った。 
 「では、もう一曲!」
 「『青い山脈』をお願いします!」
 練習したことのない歌だ。しかし、これも見事に歌い上げた。大きな拍手が轟いた。
 合唱団のメンバーは、何事も、心を定め、体当たりでぶつかっていく時、高い障壁も乗り越えられることを確信したのであった。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)6月23日より転載】


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