浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

清新/二十四〈小説「新・人間革命」〉

 


清新/二十四 法悟空 内田健一郎 画 (5849)

 山本伸一たちの乗った列車は、盛岡を過ぎて、やがて青森県に入り、八戸、三沢を経たあと、長いトンネルに入った。
 闇を抜けた時、息をのんだ。一面の雪景色であった。
 車窓を粉雪が飛び去っていく。
 伸一は、青田進に語った。
 「青森の冬は、雪との壮絶な戦いなんだね。しかし、この純白の世界は、あまりにも美しい。厳しい風土で戦う人への恩賞だね」
 それから、近くにいた、同行メンバーに呼びかけた。
 「みんなで詩を作ろう。和歌でも俳句でもいいよ。自分が目にした風景から、何を感じ取っていくかが大事なんだ。詩歌を詠むには“発見”が必要だ。つまり、それによって、洞察力を磨いていくこともできる」
 皆、慌てて詩や歌作りに取り組んだ。
 それから三、四十分で青森駅に到着し、車で青森市の青森文化会館へ向かった。
 会館に着いたのは、午後六時前であった。
 高等部員の有志が庭に造った、高さ三メートル余の、大白鳥の雪像が一行を迎えてくれた。雪はやんでいたが、寒気が肌をさす。
 車を降りた伸一が最初に向かったのは、会館の前に立つプレハブの建物であった。そこに役員らしい青年の姿が見えたからだ。
 戸を開けた。
 「ご苦労様!」
 伸一が声をかけると、居合わせた青年たちが、驚いた表情で彼の顔を見つめた。ここは創価班、白蓮グループなど役員の青年たちが、作業場所や控室として使っているようだ。
 「陰で黙々と働いてくださっている、本当の後継者の皆さんに、一番先にお会いしに来ました。みんな、寒いから風邪をひかないようにね。よろしくお願いします!」
 陰で苦労し、奮闘している人を最大に讃え励まそうと、伸一は深く心に決めていた。いや、そこに執念を燃やしていたといってよい。
 創価人間主義の心を、自らの行動をもって伝え残そうと、彼は必死であったのだ。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)7月12日より転載】


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