清新/二十七〈小説「新・人間革命」〉
清新/二十七 法悟空 内田健一郎 画 (5852)
山本伸一は、青田進らを見て言った。
「ところで、青森に来る列車の中で、雪を見て詩歌を作ろうということになったが、それはどうなっているかね」
皆、ドキッとした。詩を書き始めて、最初の一段落で止まっていたり、和歌を何首か詠んだものの、推敲する余裕がなく、とても公表できるものではなかったからである。
「すぐに、このあと、清書して、提出させていただきます」と、青田が答えた。
二十分ほどして、皆が作品を持ってきた。
伸一は、さっそく目を通した。
「なかなかいいじゃないか。『聖教新聞』に掲載できないか、相談してみよう」
皆、“大変なことになった”と思った。
青田の詩には、「一陽来春」という題名がつけられていた。
「車窓に開けゆく
荒涼たる銀世界
きびしき風雪をついて
広布に進む
同志の姿 偲ばる」
また、東北長の山中暉男は、車中からの雪景色だけでなく、青森文化会館到着後の思いも歌に詠んでいた。
「青森は 人よし海よし 吹雪よし
広布の牙城に 冴える月よし」
さらに、同行していた本部の青年職員は、猛る吹雪に、広宣流布に生きる自身の前途を重ねて詩を作り、「我が人生は決定せり 我は進まん 我は征かなん」と詠んだ。自ら表舞台に立とうとすることなく、陰に徹して、黙々とわが使命を果たすために努力を重ねている青年であった。
そして、こう結んでいた。
「北国の風雪よ
我を鍛えよ 厳父の如く」
伸一は、皆の詩歌から、労苦を厭わぬ気概を感じた。頼もしいと思った。
彼は、皆が詩歌を作ることを通して、風雪のなかで戦い生きる同志の苦闘を、わが苦とする決意を固めてほしかったのである。
【「聖教新聞」2016年(平成28年)7月15日より転載】
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