浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

〈小説「新・人間革命」〉

 

清新/四十四 法悟空 内田健一郎 画 (5869)


 一月二十日夕刻、山本伸一は、来日中のオックスフォード大学のウィルソン社会学教授と、東京・渋谷の国際友好会館(後の東京国際友好会館)で会談した。
 教授とは、前年十二月二十五日の聖教新聞社での語らいに続いて二度目の会談である。
 最初の会談の折、いかにして人材を育て上げていくかが話題となった。
 教授は、オックスフォード大学ではマスプロ教育を排して、学生への一対一の個人教育・指導を主眼とするチューター制度を導入していることを紹介。それによって、個人差のある学生たちを向上させ、素質を開花させていくように努めていると語った。
 伸一は、学生個々人に光を当てていこうとする精神に共感するとともに、創価学会は草創期以来、伝統的に、一人ひとりの向上に焦点を合わせて、個人指導を一切の活動の機軸としてきたことを述べた。
 また、信仰と組織の関係についても話題にのぼった。信仰が個人の内面の自由に基づいているのに対して、組織は、ともすれば人間を外側から拘束するものになりかねない。
 伸一は、組織のもたらす問題点を考慮したうえで、各人の信仰を深化するための手段として、組織は必要であるとの立場を明らかにし、教授の見解を尋ねた。
 ウィルソン教授は、まさに、それこそが宗教社会学のポイントとなるテーマであり、意見が分かれるところであるとしたうえで、概要、次のように答えた。
 ――多くの教団は、所期の目的を達成してしまうと、内部的な矛盾が露呈してくるものである。その弊害に陥らないためには、常に目的意識の高揚と、誠意と真心で結ばれた人間関係が不可欠になる。
 つまり、組織は人間のためにあるという原点を常に見失うことなく、誠意と真心という人間性の絆が強靱であることが、組織主義の弊害を克服する力になるというのだ。
 この時の語らいは、実に四時間にも及び、二人は、再会を約し合ったのである。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)8月5日より転載】


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