浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

〈小説「新・人間革命」〉

 

清新/五十五 法悟空 内田健一郎 画 (5880)

 時代が変動していくなかで、宗教には、人びとの精神に、平和と幸福を創造する智慧の光を送り続ける使命と責任がある。
 そのために宗教者には、共に最高の真理を探究し続け、教えを自ら比較、検証し、切磋琢磨していく向上への努力が不可欠となる。それを欠いた宗教は、社会から遊離したものになりかねない。
 では、宗教を比較、検証するうえで求められる尺度とは何であろうか。平易に表現すれば、「人間を強くするのか、弱くするのか」「善くするのか、悪くするのか」「賢くするのか、愚かにするのか」に要約されよう。
 また、宗教同士は、人類のためにどれだけ貢献できるかを競い合っていくことだ。つまり、初代会長・牧口常三郎が提唱しているように、「人道的競争」に力を注いでいくのだ。武力などで相手を威服させるのではなく、自他共の幸福のために何をし、世界平和のためにどれだけ有為な人材を送り出したかなどをもって、共感、感服を勝ち取っていくのである。
 さらに、人類の平和、幸福のために必要な場合には、宗教の違いを超えて協力し合い、連帯していくことも大事である。
 山本伸一は、本年、「七つの鐘」が鳴り終わることを思うと、未来へ、未来へと思索は広がり、二十一世紀へ向かって、人類の平和のために学会が、宗教が、進むべき道について考えざるをえなかった。そして、宗教の在り方などをめぐっての、ウィルソン教授との意見交換を大切にしていきたいと思った。
 伸一と教授は、その後、ヨーロッパで、日本で対談を重ね、また書簡をもって意見交換し、一九八四年(昭和五十九年)秋、英語版の対談集『社会と宗教』をイギリスのマクドナルド社から発刊する。翌年には、日本語版を講談社から刊行。それは、多くの言語に翻訳、出版されていった。
 西洋と日本、宗教社会学者と宗教指導者という、立場の異なる両者の対話であったが、人類の未来を展望しての精神の共鳴音は、鮮やかな響きを奏でたのである。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)8月18日より転載】


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