浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

〈小説「新・人間革命」〉

 

清新/六十一 法悟空 内田健一郎 画 (5886)

 九州記念幹部会は、会場後方から山本伸一が見守るなか、本部長の代表抱負へと移った。皆、この「伝統の二月」を大勝利で飾ろうと、意気軒昂に決意を披瀝していった。
 婦人部代表の熊本県・熊本南本部の成増敬子が、明るく淡々と抱負を語り始めた。
 「私の本部は、熊本駅を中心に、夏目漱石の『草枕』で有名な金峰山から南は有明海までの広大な地域です。日々、愛車“広布号”に乗って、元気に駆け巡っています。
 個人指導に回っていると、婦人部員から、『どこに行きなはっとですか?』(どこへ行くのですか?)、『寄っていってはいよ』(寄っていってください)と、気さくに声がかかる人情味豊かな地域が、わが本部です。
 本年初頭、私は、自分が先頭に立って、一人ひとりと徹底して対話し、粘り強く励ましていこう、個人指導を推進していこうと決意し、実践してきました。この『伝統の二月』に、何人の友と会えるか楽しみです」
 伸一は思わず、「そうだ! それしかない」と声援を送っていた。恩師・戸田城聖が生涯の願業として掲げた会員七十五万世帯達成の突破口を開き、「伝統の二月」の淵源となった一九五二年(昭和二十七年)二月の蒲田支部での活動――その勝利の眼目は、まさに徹底した個人指導にあったのだ。
 伸一は、最前線組織であった組単位の活動を推進するために、各組を回っては、メンバーの激励に徹した。折伏の仕方がわからないという人には、自ら一緒に仏法対話した。
 会員のなかには、夫が病床に伏しているため、自分が働いて何人もの子どもを育てている婦人もいた。失業中の壮年もいた。資金繰りが行き詰まり、蒼白な顔で「もうおしまいです」と肩を落とす町工場の主もいた。
 皆が苦悩にあえいでいた。伸一は、その人たちの言葉に真剣に耳を傾け、時に目を潤ませながら、力強く、こう訴えた。
 「だからこそ信心で立つんです。御本尊の力を実感していくチャンスではないですか!
 宿命転換のための戦いなんです」


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【「聖教新聞」2016年(平成28年)8月25日より転載】


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