浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 三十 法悟空 内田健一郎 画 (5921)

 ガンジス川は、インドで「ガンガー」と呼ばれる。ヒマラヤ山脈のガンゴトリ山にある氷河などに源を発し、インド北部を流れ、幾つもの支流に分かれて、ベンガル湾に注いでいる。その全長は二五一〇キロメートルといわれる。
 仏典にある、六万恒河沙の「恒河」とは、ガンジス川をいう。法華経の従地涌出品第十五の「六万恒河沙」は、ガンジス川の砂粒の六万倍との意味であり、それほど多くの、無数の“地涌の菩薩”が大地から涌出することを説いている。
 ゆえに、このインドにも、数多の地涌の菩薩が出現することは間違いないと、山本伸一は、強く、深く確信していたのである。
 彼は、懇談会であいさつしたあと、インドの同志と記念撮影することにした。
 撮影の際、メンバーは、自分たちの中央に大きな椅子を置いた。伸一のために用意したのである。
 それを見ると、彼は言った。
 「私は、遠くから集ってこられた方など、皆さんの労苦に賞讃と敬意の意味を込めて、脇に立たせていただきます。皆さんを見守っていきたいんです。この椅子には、皆さんたちの中心者に座っていただきましょう」
 インド広布への決意をとどめ、カメラのシャッターが切られた。
 後年、この写真を見ながら、メンバーの一人は語っている。
 「苦しい時もありました。辛いことも、悲しいこともありました。でも、私は、この写真を見詰め、抱きしめて頑張ってきました。この写真のように、山本先生は、いつも私たちと共にいる、そばに立って、私たちを見守ってくださっている――そう確信することができたからです」
 伸一もまた、写真を見ては、インドの同志を思い起こし、題目を送り続けたのである。
 直接、会う機会はなくとも、互いの心は通い合う。唱題によってこそ、魂の絆が織り成され、結ばれていくのだ。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)10月6日より転載】


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