浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 三十八 法悟空 内田健一郎 画 (5929)

 「だからこそ」――こう言ってカラン・シン副会長は、出席者に視線を巡らし、大きく息を吸い、さらに力を込めて語っていった。
 「人類が将来も生存し続けるために、個々人が結束して、平和と調和をめざして努力しなければなりません。人種、カーストなどで人間を分断する考え方は改めなければならないのです。インドの古い時代に“人類はすべて一つの家族”という考え方がありました。この理念に立ち返るべきであります!」
 山本伸一をはじめ、訪印団一行は、惜しみない拍手を送った。
 シン副会長は、インドには世界に誇る古代文明が興り、偉大な人物が生まれ、優れた思想を創造してきたことに言及。
 「その一人が、あのシッダールタ(釈尊)であります。彼の教えはアジアの国々に伝えられ、大勢の人びとがシッダールタの道を歩もうと努力しています。私は、彼の教えを基調とした創価学会の思想と目的を勉強し、すばらしさに感嘆しました。また、学会が常に平和をめざしてきたことを、心から賞讃したいと思います。しかも、その運動は、世界に広がっております。
 今、私は、創価学会の皆さんをインドに迎えることができ、喜びに堪えません。今日は、西洋式の“乾杯”ではなく、アジア式のサンスクリット語の“祈り”をもって、ご一行を歓迎したい。これは人間の精神のための祈りであります」
 厳かにサンスクリット語で詩を誦していった。最高の礼を尽くしての歓迎であった。
 学会は、この招待の返礼として、翌一九八〇年(昭和五十五年)十月、シン副会長を日本に招き、さらに友情を深めていった。
 来日の折、伸一との語らいで対談集の発刊が合意され、八八年(同六十三年)六月、『内なる世界――インドと日本』が上梓される。
 ヒンズー教仏教という違いを超えて、両者の底流にあるインドの精神的伝統を浮かび上がらせ、その精神文明が現代の危機を克服する力となることを訴えるものとなった。

 


【「聖教新聞」2016年(平成28年)10月17日より転載】


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