浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 四十七 法悟空 内田健一郎 画 (5938)


 二月九日の午後八時から、インディアン・エクスプレス社のR・N・ゴエンカ会長が主催する訪印団一行の歓迎宴が、ニューデリーのホテルで行われた。「インディアン・エクスプレス」は、インド屈指の日刊紙である。
 歓迎宴には、訪中を前にしたバジパイ外相、L・K・アドバニー情報・放送相をはじめ、多数の識者らが参加し、真心に包まれた語らいの一夜となった。
 ゴエンカ会長は豪放磊落で精悍な新聞人であった。七十代半ばとは思えないほど、快活で、哄笑が絶えず、エネルギッシュな話し方には不屈の闘志があふれていた。インドに到着した折も、真夜中にもかかわらず、空港まで出迎えに来てくれた。
 彼は、一九〇四年(明治三十七年)四月に、インド東部のビハール州に生まれた。青年時代に、イギリスからのインド独立を勝ち取ろうと、ガンジーの運動に加わった。
 自身の発行する「インディアン・エクスプレス」を武器に、イギリスが行っている数々の偽りを暴き、戦い抜いた。
 インドが独立したあとも、政府による新聞への激しい圧迫の時代があった。しかし彼は、それに屈することなく、言論人としての主義主張を貫いていった。
 伸一は、その苦境を突き破ったバネは何かを尋ねた。ゴエンカ会長は胸を張った。
 「人びとに対する義務です! 新聞は私個人に属するのではなく、人びとのためにあります。私は、単に人びとの委託、信任を受けた、いわば代理人です。ゆえに、人びとに応えるために、私は支配者に屈服、服従することはできませんでした」
 言論人の使命は、民衆の声を汲み上げ、その見えざる心に応え、戦うことにある。
 精神の自由を剝奪しようとする権力は、まず表現・言論の自由を奪おうとする。それを手放すことは、人間の魂を捨てることだ。
 また、人生の処世訓を問うと、こう答えた。
 「決して破壊してはいけない。建設的であれ。これが、私の人生の主義です」


【「聖教新聞」2016年(平成28年)10月27日より転載】


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