浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 四十九 法悟空 内田健一郎 画 (5940)


 二月十一日――恩師・戸田城聖の生誕の日である。戸田が存命ならば七十九歳になる。
 山本伸一は今、その師に代わって平和旅を続け、師が最も広宣流布を願った仏教発祥の地・インドで、紺青の空を仰いでいることに、深い感慨を覚えた。
 伸一は、“戸田先生には、長生きをしていただきたかった……”と、しみじみと思う。
 しかし、命には限りがある。“だから、先生は不二の弟子として私を残されたのだ。先生に代わって、生きて生きて生き抜いて、東洋広布を、世界広布を進めるのだ!”と、彼は、何度も自分に言い聞かせてきた。
 伸一は、弟子の道に徹し抜いてきたことへの強い自負があった。この晴れ渡る空のように、心には一点の後悔もなかった。師子の闘魂が、太陽のごとく燃え輝いていた。
 この日の朝、伸一たち訪印団一行は、ニューデリーから、空路、ビハール州の州都・パトナへと向かった。
 彼方に、白雪をいだき、光り輝くヒマラヤの峰々を眺めながらの旅であった。
 午前十一時過ぎ、パトナの空港に到着した一行を、パトナのR・N・シンハ行政長官をはじめ、先に来ていた「インド文化研究会」の友らが出迎えた。
 そのなかに、長身のインド人青年の姿があった。彼はメンバーで、この日の朝、地元の新聞を見て、伸一のパトナ訪問を知った。そして、自宅の庭に生えていたバラで花束を作り、空港に駆けつけてきたのである。
 青年が花束を差し出すと、伸一は、「ありがとう! 感謝します」と言って固い握手を交わし、しばらく語り合った。彼は、家族のなかで、自分だけが入会しているという。
 伸一は、同行していたインド駐在の日本人会員に面倒をみるように頼み、青年に言った。
 「最初は、すべて一人から始まります。あなたには信心に励んで、幸せになり、パトナに仏法を弘めていく使命があるんです」
 眼前の一人に魂を注いで励ます。そこから、広宣流布の道が開かれる。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)10月29日より転載】


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