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浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 五十 法悟空 内田健一郎 画 (5941)

 パトナは、その昔、「花の都」(パータリプトラ)と讃えられた街である。
 緑が多く、道を行くと、車に交じって、鈴の音を響かせながら闊歩する牛車の姿も見られ、のどかな風景が広がっていた。
 午後四時前、山本伸一は、ジャイプラカシ・ナラヤンの自宅を訪ねた。ナラヤンは、マハトマ・ガンジーの弟子であり、“インドの良心”として、民衆から敬愛されているインドの精神的指導者である。
 土壁の家が立ち並ぶ路地裏の入り組んだ道を車で進み、白い石造りの家に着いた。思いのほか質素な建物であった。
 ナラヤンは、銀縁のメガネの奥に柔和な眼差しを浮かべ、初対面の伸一を歓迎し、黄色い花のレイを、手ずから首にかけてくれた。
 彼の茶色のガウンからマフラーが覗いていた。体を冷やさぬよう気遣っているのであろう。既に七十六歳の高齢であり、健康が優れぬため、週に何度か病院に通い、自宅で静養していると聞いていた。それにもかかわらず、丁重に出迎え、会談の時間を取ってくれた真心に、伸一は深い感動を覚えた。
 ナラヤンは、高校時代に国民革命の理想に燃え、非暴力・不服従運動に参加する。やがてアメリカに渡り、そこで、マルクスの革命思想に傾斜していく。急進的な社会改革に心を動かされ、ガンジーの非暴力の闘争を否定し、武力革命を肯定した時代もあった。
 しかし、ガンジーの高弟・ビノバ・バーベに触発され、再び非暴力革命の道をめざすようになる。紆余曲折を経て、ガンジーの懐に帰ってきたのだ。“良心”の大地ともいうべきガンジーの思想は、ナラヤンの“良心”の樹木を蘇生させていったのである。
 ガンジー亡きあと、彼は、師の思想を受け継ぎ、すべての階層の人びとの向上をめざす「サルボダヤ運動」を展開していった。
 どんなに豊かそうに見えても、その陰で虐げられ、飢え、苦しむ人のいる社会の繁栄は虚構にすぎない。皆が等しく幸せを享受してこそ、本当の繁栄といえよう。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)10月31日より転載】


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