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浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 五十八 法悟空 内田健一郎 画 (5949)

 休憩所の主に請われて、山本伸一たちは、好意に甘え、自宅に伺うことにした。
 家は石造りであった。主は、庭を案内し、井戸の使い方も丹念に説明してくれた。
 中庭で懇談が始まった。一行が最初に紹介されたのは主の母であった。インドの家庭では、年長者への尊敬心が厚いようだ。
 家族総出で、紅茶と菓子を振る舞ってくれた。一行のために、今、木の実の料理も作っているという。
 伸一は、ぶしつけなお願いとは思ったが、その様子を見せてほしいと頼んだ。人びとの暮らしを知っておきたかったのである。快く台所に案内してくれた。
 二人の娘が、土間の片隅にしゃがみ込んで、七輪のようなコンロで、ミルクや湯を沸かしたり、木の実を炒めたりしていた。
 水道も、ガスも、立派な調理台もあるわけではない。しかし、土間にはきれいに水が打たれ、清潔な感じがした。
 出された菓子は、すべて自家製である。また、クッションなどのカバーや子どもの服など、多くが手作りであった。モノは、決して豊富とはいえないが、一つ一つの品に愛着があふれ、人間的な温かさ、心の豊かさが感じられた。日本など、先進諸国が失いつつあるものが、ここにはあった。
 紅茶をすすりながら、語らいは弾んだ。
 伸一は、「家族は何人ですか」と尋ねた。
 主は「七人、いや八人です」と言うと、にこにこして、一匹の大きな犬を抱えてきた。
 「この犬も、家族の一員ですから」
 主の表情には、“家族”であるとの思いがあふれていた。単なるペットではなく、仕事の役割も担う共同生活者なのであろう。
 三十分ほどの訪問であったが、伸一たちと家族は、すっかり打ち解けた。帰りがけに伸一が記念の品を渡すと、主は、「必ず、また来てください」と言って、何度も彼の手を握り締めた。出会いを大切にし、対話を交わすことから、心は触れ合い、人間の絆が育まれていく。国境も、民族の壁をも超えて。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)11月9日より転載】


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