浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 六十三 法悟空 内田健一郎 画 (5954)

 ガンジーを「マハトマ」(偉大なる魂)と呼んだのはタゴールである。そして、ガンジータゴールを「グルデブ」(神聖な師匠)と呼んだ。二人は、意見が異なることもあったが、平和、非暴力、真理の探究という信念によって結ばれた「真の友」であった。
 ここに近代インドの夜明けを開いた精神の光源があるといえよう。
 午後三時半、ラビンドラ・バラティ大学に到着した山本伸一を、プラトゥール・チャンドラ・グプタ副総長の柔和な微笑が出迎えた。
 大学の構内には、レンガ造りの風格ある瀟洒なタゴールの生家も現存し、文化と芸術の芳香を放っていた。
 図書贈呈式には、多数の教職員、学生が参加した。グプタ副総長があいさつに立ち、少し高い声で流れるように語り始めた。
 「タゴールは、一九一六年(大正五年)に日本を訪れた時、短い期間でしたが、日本文化に深い感銘を受けたようです」
 副総長は、タゴールは日本の絵画に触れ、「私たちの新しきベンガルの絵画法にもう少し力と勇気と高邁さが必要であるということを私は繰り返し思ったのだ」(注)と手紙に記していることを紹介した。
 交流は、魂を触発し、眼を開かせる。異文化との交わりのなかにこそ発展がある。
 そして、こう述べて話を結んだ。
 「タゴールへの日本文化の影響は、近代における日印文化交流の第一歩と意義づけられるのではないかと思います。歴史を見ても、政治的な連帯は決して長続きしません。しかし、文化の連帯には永続性があります」
 文化は、人間の精神を触発し、心を結び合う。ゆえに学会は、文化の大道を開き進む。
 そのあと、“ウットリオ”と呼ばれるストールに似た細長い華麗な布が、大学関係者から訪印団の首にかけられた。これは、タゴールによって始められたとされる、最高の賓客を迎える際の儀式であるという。
 また、タゴールの肖像写真や直筆の詩の写真など、真心の記念品も一行に贈られた。


 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 「書簡集」(『タゴール著作集11』所収)我妻和男訳、第三文明社


【「聖教新聞」2016年(平成28年)11月16日より転載】


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