浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

源流 六十七 法悟空 内田健一郎 画 (5958)

 


 十五日の午後三時半、訪印団一行は、カルカッタにあるインド博物館を訪問した。
 館内では、紀元前三世紀、マウリヤ朝アショーカ王によって建立された石柱頭である四頭獅子像が目を引いた。
 獅子像の台座の部分には、車輪のかたちをした模様が描かれている。これは「法輪」といい、釈尊の説いた教え、すなわち教法が、悪を砕き、人から人へと次々に伝わることを意味している。それを、自ら前進して外敵を破り四方を制するという転輪聖王の輪宝に譬え、図案化したものである。仏教の真理と正義に基づいて世を治めるアショーカを象徴しており、後に「法輪」はインドの国旗に用いられることになる。
 展示は、先史文明から始まり、インドの豊かな諸文明を、壮大な規模で紹介していた。
 見学のあと一行は、同博物館の事務所へ案内された。一般には非公開の紀元前四世紀ごろの仏舎利の壺を、特別に見せてもらった。仏舎利が入っていることを表す古代インドの文字が刻まれた唯一の壺であるという。
 博物館の展示品を鑑賞した山本伸一は、仏教盛衰の歴史を思った。
 “釈尊の説いた永遠なる生命の法は、アショーカ王の治世に安らかな月光を投げかけ、慈悲を根底とした社会の園を開いた。しかし、時は過ぎ、末法濁世の暗雲に月は没した。
 その時、日本に日蓮仏法の太陽出でて、末法の闇を払う黎明の光を放った。そして今、創価の同志の奮闘によって、「七つの鐘」は高らかに鳴り渡り、東天に日輪は赫々と躍り出たのだ。世界広宣流布の新生の朝だ! 立正安国を世界に実現し、人類のあらゆる危機を乗り越え、恒久の平和と繁栄の道を築く仏法新時代が到来したのだ!”
 伸一は、その出発のために、さらに世界各地に新しき広布の源流を開かねばならぬと決意していた。今回の訪問では、仏教発祥の地であるインドに一筋の流れをつくることができた。その宝の一滴一滴を大切にし、全力で守り抜こうと、彼は深く心に誓っていた。

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)11月21日より転載】


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