浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

大山 十三 法悟空 内田健一郎 画 (5973)


 山本伸一には、以前から考えてきたことがあった。それは、会長の交代であった。
 一人の人間が長期間にわたって責任を担っていたのでは、人材は育ちにくい。令法久住のためにも、早く後継の流れをつくっておきたいというのが、彼の願いであった。
 会長就任十年を経た一九七〇年(昭和四十五年)に、いつかは辞任したい旨の意向を何度か執行部に伝えたが、会長は「終身」であることを理由に反対された。
 また、七四年(同四十九年)に、宗教法人としての創価学会の代表役員を理事長に委譲した際や、七七年(同五十二年)にも交代の話を出したが認められなかった。
 しかし、会長就任以来十九年を経て、「七つの鐘」も終了する。“折を見て会長の交代を”とも考えていた。彼は、まだ五十一歳であり、幸いにして元気である。“会長を退いても、皆を見守りながら、応援していくこともできる”との思いがあった。
 仏法者として世界を展望する時、伸一には、やらねばならぬことが多々あった。
 世界平和の建設のため、より広範に具体的な行動も起こしていきたかった。世界の指導者との対話も、さらに重ねていく必要性を感じていた。仏法を基調にした文化、教育の推進にも、一段と力を注ぎたかった。そして何よりも、世界広布は、いよいよこれから本格的な建設期を迎える段階にある。
 だが、自分が世界へと大きく踏み出すならば、日本国内のバトンを受け継ぐ者は、激浪の海へ船出していくことになる。学会は絶頂期にあるとはいえ、暗雲が垂れ込め、嵐が吹き荒れているのだ。それは、決して容易な航路ではない。大試練を覚悟しなければなるまい。後を託す幹部には、信心の透徹した眼で魔を魔と見破り、勇猛果敢に戦い進んでいく決意と行動が不可欠になろう。伸一は、今こそ皆に勇気をもってほしかった。
 古代ローマの哲人セネカは言う。
 「逆境の衝撃も勇気ある人の心を変えることはない」(注)


 小説『新・人間革命』語句の解説

 ◎令法久住/「法をして久しく住せしめん」と読む。法華経見宝塔品第十一の文。未来にわたって、妙法を伝えていくこと。  

 引用文献
 注 「神慮について」(『セネカ 道徳論集(全)』所収)茂手木元蔵訳、東海大学出版会


【「聖教新聞」2017年(平成29年)1月17日より転載】


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