浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

力走/五十六〈小説「新・人間革命」〉

 


力走 五十六/法悟空 内田健一郎 画 (5813)

 山本伸一の激励は、高知研修道場を出発する間際まで続いた。ロビーでも、愛媛県の南予から来た婦人に声をかけ、南予訪問を約束し、悪僧の仕打ちに泣かされてきた同志へ、励ましの言葉を託した。
 研修道場の玄関を出た伸一は、雄大な景色を生命に刻みつけるように、しばらく周囲をゆっくりと歩いた。見送る同志に、大きく手を振って、車上の人となった。
 彼は、それから足摺岬へ向かった。そこでレストランや土産物店などを営む何人かの学会員を、励ましたかったのである。
 “同志がいるならば、どこまでも行こう!”と、心に決めていたのだ。
 車は、坂道を下って、国道を足摺岬に向かって進んだ。右手に青い大海原が広がっていた。土佐清水市の中心街を通って、足摺スカイラインを走り、足摺岬灯台の手前にある、学会員が経営するレストランを訪れた。このお宅は、座談会などの会場になっているという。そこに、多くの会員が集っていた。
 伸一は、皆と勤行したあと、外へ出て、一緒に焼きイカを頬張りながら語り合った。
 「ここは交通は不便かもしれませんが、空気もきれいで、美しく雄大な自然がある。そのなかで学会活動に励めるなんて、最高に幸せではないですか。私も住みたいぐらいです。
 自分のいる場所こそが、使命の舞台です。大都会の方がいいと思うこともあるかもしれないが、大都会は自然もないし、人間関係も希薄です。東京などに憧れて出ていった人たちが、懐かしく心に思い描くのは、結局、ふるさとの美しさ、温かさなんです。
 彼方に幸せを求めるのではなく、自分のいるこの場所を、すべての面で、最高の地に、常寂光土にしていってください。自分の一念を変えることによって、それができるのが仏法なんです」
 さらに伸一は、「私たちは、御本尊を通し、いつも心はつながることができます。皆さんの健康と、ご活躍を祈っています」と言って、皆に別れを告げた。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)5月30日より転載】

 


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