浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

身に入む/今日の俳句 ≪第2306号≫

≪2016年(平成28年)10月31日(月)≫(旧暦10/1) 建てし話身に入む西の正倉院 松崎鉄之介 身に入むや雨やみし時山近し 中川節子 身に入むや亡霊現る後宴能 金田美恵子 身に入むや倒木のごと兄逝きて 小沢きく子 身に入むも杖を抱ふるほかはなし 村越化石 ※ 身に入…

小説「新・人間革命」

源流 五十 法悟空 内田健一郎 画 (5941) パトナは、その昔、「花の都」(パータリプトラ)と讃えられた街である。 緑が多く、道を行くと、車に交じって、鈴の音を響かせながら闊歩する牛車の姿も見られ、のどかな風景が広がっていた。 午後四時前、山…

蜜柑/今日の俳句 ≪第2305号≫

≪2016年(平成28年)10月30日(日)≫(旧暦9/30) 密柑山ま白き雲の夜も満つ 加倉井秋を をとめ今たべし蜜柑の香をまとひ 日野草城 蜜柑山黄のまんだらに大き寺 大野林火 生い立ちに風は集まる蜜柑山 河野志保 脱稿の夜が更けてをり蜜柑剥く 鳴海清美 ※ 蜜柑・青蜜…

栗/今日の俳句 ≪第2304号≫

≪2016年(平成28年)10月29日(土)≫(旧暦9/29) 下野や風雨いよいよ栗林 鈴木真砂女 美しき栗鼠の歯形や一つ栗 前田普羅 すべてなしぬひとつの栗のおもさ掌に 長谷川素逝 空ふかく栗生れいづ玉のごと 角川源義 栗を剥き独りの刻を養へり 野沢節子 ※ 栗・甘栗・焼…

小説「新・人間革命」

源流 四十九 法悟空 内田健一郎 画 (5940) 二月十一日――恩師・戸田城聖の生誕の日である。戸田が存命ならば七十九歳になる。 山本伸一は今、その師に代わって平和旅を続け、師が最も広宣流布を願った仏教発祥の地・インドで、紺青の空を仰いでいること…

胡桃/今日の俳句 ≪第2303号≫

≪2016年(平成28年)10月28日(金)≫(旧暦9/28) 胡桃落つ音すぐ消えて山の池 飯田龍太 晴れし日の胡桃の落つる音と知る 中村汀女 ひと死して小説了る炉の胡桃 橋本多佳子 胡桃割る燈の円光の一家族 大野林火 父といふしづけさにゐて胡桃割る 上田五千石 ※ 胡桃・…

小説「新・人間革命」

源流 四十八 法悟空 内田健一郎 画 (5939) 訪印団一行の歓迎宴が一段落したころ、ゴエンカ会長はいたく恐縮した表情で、山本伸一に伝えた。 「誠に申し訳ありませんが、孫娘の結婚披露宴にまいりますので、一足お先に失礼させていただきます」 明日が…

末枯/今日の俳句 ≪第2302号≫

≪2016年(平成28年)10月27日(木)≫(旧暦9/27) 末枯や身に百千の注射痕 日野草城 末枯の陽よりも濃くてマッチの火 大野林火 末枯に一とき囲む燐寸の火 沢木欣一 末枯や日当れば水流れゐる 篠原温亭 うたた寝の夢のうち外末枯れて 狩野芙佐 ※ 末枯 うらは梢のこ…

小説「新・人間革命」

源流 四十七 法悟空 内田健一郎 画 (5938) 二月九日の午後八時から、インディアン・エクスプレス社のR・N・ゴエンカ会長が主催する訪印団一行の歓迎宴が、ニューデリーのホテルで行われた。「インディアン・エクスプレス」は、インド屈指の日刊紙で…

橙/今日の俳句 ≪第2301号≫

≪2016年(平成28年)10月26日(水)≫(旧暦9/26) 黙っている優しさ ダウ代の全円は 伊丹公子 橙や伊豆山権現雲を垂れ 水原秋櫻子 橙は実を垂れ時計はカチカチと 中村草田男 橙やうすれうすれし隼人の血 福永耕二 橙の青く小さき実伊予言葉 山川喜八 ※ 橙・回青橙…

小説「新・人間革命」

源流 四十六 法悟空 内田健一郎 画 (5937) 山本伸一ら訪印団一行は、ネルー大学に引き続いて、ニューデリーの中心街ティーン・ムルティにあるネルー記念館を訪問した。 記念館の建物は、バルコニーが張り出した重厚な石造りの二階建てであった。かつて…

草の穂/今日の俳句 ≪第2300号≫

≪2016年(平成28年)10月25日(火)≫(旧暦9/25) 名を知りてより草の穂のうつくしき 林原耒井 釣れぬ子の穂草流しにきそへる声 原田種茅 生前葬の草の穂しばし月光に 増田まさみ 船室を飛ぶ島抜けの草の絮 八染藍子 草の穂や夫と摘みゐて父の郷 小池文子 ※ 草の穂…

小説「新・人間革命」

源流 四十五 法悟空 内田健一郎 画 (5936) 山本伸一は、その後もナラヤナン副総長との友誼を大切にしていった。日本で、インドで、出会いを重ねた。 ナラヤナンは一九八四年(昭和五十九年)にケララ州から下院議員選挙に立候補し、当選する。外務担当…

小説「新・人間革命」

源流 四十四 法悟空 内田健一郎 画 (5935) ナラヤナン副総長も、山本伸一と同じく、図書贈呈を単に書物の授受の儀式に終わらせたくはなかったようだ。副総長は伸一に、「ぜひ、語らいの時間をもってください」と言い、教員、学生らに自己紹介するよう…

落し水/今日の俳句 ≪第2298号≫

≪2016年(平成28年)10月23日(日)≫(旧暦9/23) 落し水落ちいそぐ夜となれりけり 木下夕爾 脱藩の文は届かず落し水 和田照海 人の手に託すたんぼや落し水 岡田史女 屋根石に磐梯とがる落し水 望月たかし 落し水母の手甲の流れ来し 岡本高明 ※ 落し水・堰外し・田…

めはじき/今日の俳句 ≪第2297号≫

≪2016年(平成28年)10月22日(土)≫(旧暦9/22) 谷けぶり遠き山家の益母草 鈴木宇亀雄 めはじきをしごけば花のこぼれけり 坊城中子 めはじきや独り身に似し独り旅 本多静江 めはじきの瞼ふさげば母がある 長谷川かな女 めはじきや伊賀の女の子の細瞼 橋本鶏二 ※ …

小説「新・人間革命」

源流 四十三 法悟空 内田健一郎 画 (5934) 山本伸一は、ナラヤナン副総長と一緒に、図書贈呈式が行われる会議室へと向かった。 副総長は、歩きながら大学の概要を説明し、「学生たちには、学べぬインドの民衆のために尽くしてほしいというのが私の願い…

時鳥草/今日の俳句 ≪第2296号≫

≪2016年(平成28年)10月21日(金)≫(旧暦9/21) ほととぎす草今日のむなしき手をのべぬ 八木林之助 杜鵑草活けて落柿舎女住む 金子翠羽 山風のさらりとありし杜鵑草 金子翠羽 殉教の土の暗さ時鳥草 後藤比奈夫 墓の辺や風あれば揺れ杜鵑草 河野友人 ※ 時鳥草・杜…

小説「新・人間革命」

源流 四十二 法悟空 内田健一郎 画 (5933) ナラヤナン副総長は、一九二〇年(大正九年)に、インド南部のケララ州に七人きょうだいの四人目として生まれた。家は貧しかったが、勉強が大好きな少年であった。兄や姉は自分たちが小学校に通うことを断念…

藪虱/今日の俳句 ≪第2295号≫

≪2016年(平成28年)10月20日(木)≫(旧暦9/20) 人影や息を殺せる藪じらみ 相生垣瓜人 冒険の足りなき日々や草虱 能村研三 草じらみつけ峯入りの列にあり 高橋よし子 過ぎし日をたづねあるけば草虱 遠藤梧逸 草虱有馬の坂にむしりけり 山尾玉藻 ※ 藪虱・草虱 野…

小説「新・人間革命」

源流 四十一 法悟空 内田健一郎 画 (5932) 山本伸一は、ジャッティー副大統領と会談した九日の午後、ニューデリーにあるジャワハルラル・ネルー大学を訪問した。教育交流の一環として、図書を贈呈するためである。 同大学は、その名が示す通り、故ジャ…

鬼灯(ほほづき)/今日の俳句 ≪第2294号≫

≪2016年(平成28年)10月19日(水)≫(旧暦9/19) 胎内に時々鬼灯まぎれ込む 田端賀津子 ほほづきに女盛りのかくれなし 河野多希女 ほほづきのぽつんと赤くなりにけり 今井杏太郎 月白の鬼灯畠ゆらゆらす 小林喜一郎 鬼灯はいつまでも水を思っている 入江一月 ※ 鬼…

小説「新・人間革命」

源流 四十 法悟空 内田健一郎 画 (5931) ジャッティー副大統領は、しばらく視線を落とした。憂いに満ちた目であった。やがて、その目は、次第に輝きを増していくように感じられた。それは、未来を担う子どもたちのために、インドを発展させようとする…

藪がらし/今日の俳句 ≪第2293号≫

≪2016年(平成28年)10月18日(火)≫(旧暦9/18) 藪からしも枯れてゆく時みやびやか 細見綾子 藪からしいなす小風も忍冬忌 清水基吉 藪からし咲き黒猫の生あくび 飯田素蘭 かくれ逢ふごとくまた逢ふ藪からし 上田五千石 喪の家の鶏犬睦む藪からし 石田あき子 ※ 藪…

小説「新・人間革命」

源流 三十九 法悟空 内田健一郎 画 (5930) 山本伸一は、日々、インドの指導者たちと会い、意見交換することが楽しみであった。 二月九日――空は澄み渡っていた。 午前十一時には、バサッパ・ダナッパ・ジャッティー副大統領をニューデリーの官邸に訪ね…

溝蕎麦/今日の俳句 ≪第2292号≫

≪2016年(平成28年)10月17日(月)≫(旧暦9/17) みぞそばに沈む夕日に母を連れ 中村汀女 溝蕎麦の鳥の脚よりなほ繊き 水野孫柳 みぞそばのかくす一枚の橋わたる 山口青邨 みぞそばの折り重なるも氷室あと 日野たんぽぽ みぞそばの茂みなれども水浸し 種田果歩 ※ …

小説「新・人間革命」

源流 三十八 法悟空 内田健一郎 画 (5929) 「だからこそ」――こう言ってカラン・シン副会長は、出席者に視線を巡らし、大きく息を吸い、さらに力を込めて語っていった。 「人類が将来も生存し続けるために、個々人が結束して、平和と調和をめざして努力…

赤のまんま/今日の俳句 ≪第2291号≫

≪2016年(平成28年)10月16日(日)≫(旧暦9/16) 板塀に継あててある赤のまま 遠藤梧逸 ひと恋へば野はきりさめの赤のまんま 三橋鷹女 長雨の降るだけ降るや赤のまんま 中村汀女 産小屋を今は用ひず赤のまま 清崎敏郎 積み捨てし水禍の畳赤のまま 渡辺文雄 ※ 赤の…

小説「新・人間革命」

源流 三十七 法悟空 内田健一郎 画 (5928) 二月八日の午後八時から、山本伸一主催の答礼宴が、ニューデリーのアショーカホテルで開かれた。 答礼宴には、ICCR(インド文化関係評議会)のカラン・シン副会長夫妻、デリー市長夫妻をはじめ各界代表約…

蓼の花/今日の俳句 ≪第2290号≫

≪2016年(平成28年)10月15日(土)≫(旧暦9/15) うつむきて歩く心や蓼の花 石田波郷 膝立てて城を遠見や蓼の花 森澄雄 老人に童心のふと蓼の花 飯田龍太 蓼咲いて湖(うみ)へ一すじ風の道 高橋謙次郎 花蓼に日の定まりし嵯峨野ゆく きくちつねこ ※ 蓼の花・蓼の穂…