≪2017年(平成29年)4月17日(月)≫(旧暦3/21) 浅蜊汁殻ふれ合ふもひとりの餉 永方裕子 浅蜊掘る人が動けば鷺動く 金久美智子 浅蜊掻く男の黙に近寄れず 柴田雪路 夕日だるし浅蜊を量る音こぼれ 松村蒼石 浅蜊売るこゑの一旦遠のきし 伊藤白潮 ※ 浅蜊・浅蜊汁・…
雌伏 二十 法悟空 内田健一郎 画 (6048) 三台の撮影台を使って写真撮影が行われたが、長野研修道場は長蛇の列が途切れることはなかった。飯山、長野、上田から、穂高、松本から、塩尻、諏訪から、飯田、伊那から、続々と同志は集って来た。 山本伸一は…
≪2017年(平成29年)4月16日(日)≫(旧暦3/20) 雀蛤と化して食はれけるかも 櫂未知子 蛤の鍋を囲みてクラス会 赤池貴のえ 蛤や腹話術師にやや翳り 田中亜美 守るもの何も持たねど蛤です しおやきみこ 蛤に衣を着せる人形師 小林朱夏 ※ 蛤・はまぐり ほとんど全国…
≪2017年(平成29年)4月15日(土)≫(旧暦3/19) 烏貝日の没る方を巷としぬ 加倉井秋を 埋木と共に掘られぬ烏貝 高田蝶衣 世の隅の闇に舌出す烏貝 北 光星 烏貝殻をひらきて真珠色 米田花壺 くはへゐる藁一とすぢや烏貝 黒米松青子 ※ 烏貝 わが国でとれる淡水産二…
雌伏 十九 法悟空 内田健一郎 画 (6047) 長野研修道場には、三台の撮影台が設置されていた。 午後一時前、山本伸一は、「さあ、戦いの開始だ!」と峯子に言うと、ポロシャツ姿で皆の待っている研修道場の前庭に飛び出していった。 「お待ちしていました…
≪2017年(平成29年)4月14日(金)≫(旧暦3/18) 工場の塀ぎは濡らし蜆売り 沢木欣一 蜆汁もっとも淋しき硯あり オオヒロノリコ 子館に迫る河口の蜆かな 倉本マキ 世のつねの浮き沈みとや蜆汁 鈴木真砂女 蜆取雨又風に又雨に 長谷川零余子 ※ 蜆貝・真蜆・紫蜆・蜆…
雌伏 十八 法悟空 内田健一郎 画 (6046) 蔵林家では、主の龍臣と妻の芳乃の孫たち十人が、琴やハーモニカ、横笛の演奏、合唱などで、山本伸一たちを歓迎した。 子どもから孫へと信心が受け継がれ、すくすくと育っている未来っ子の姿が微笑ましかった。…
≪2017年(平成29年)4月13日(木)≫(旧暦3/17) ゆく春の田螺ほろりと沈みけり 小島 健 民宿の椀の重さよ田螺汁 小路紫狹 蓋とぢし田螺の暗さはかられず 加藤かけい 白凰の塔の真下の田螺かな 宮岡計次 人の裏見ゆる田螺を煮て居れば 長谷川秋子 ※ 田螺・田螺鳴く…
雌伏 十七 法悟空 内田健一郎 画 (6045) 蔵林龍臣は七十一歳であり、五人の子どもたちも、広宣流布の庭で活躍していた。この日も、アメリカに永住している四男以外は元気に集い、孫も含め、賑やかに山本伸一と峯子を迎えてくれた。 蔵林は、伸一を床の…
≪2017年(平成29年)4月12日(水)≫(旧暦3/16) オカリナや幾度も蜷の潜り出て 中山純子 蜷の道逍遥稔典姓氏論 三神あすか 乱数表たどれば蜷の軌道かな 宮嵜 亀 田の神をお連れ申して蜷田螺 ふけとしこ 蜷の道晩年が来る日暮来る 安達実生子 ※ 蜷(にな) 正しい名…
雌伏 十六 法悟空 内田健一郎 画 (6044) 山本伸一は、石塚勝夫に言った。 「お父さん、お母さんを、生涯、大切にするんですよ。父母の恩に報いることから、人間の道は始まります。報恩の心を忘れない人が、真の仏法者なんです」 さらに、個人会館を提供…
≪2017年(平成29年)4月11日(火)≫(旧暦3/15) 若狭には仏多くて蒸鰈 森 澄雄 深川や茜さしたる蒸鰈 小川千賀 ならべ干す鰈の上に置き手紙 吉屋信子 ありなしの目で雲呼べる干鰈 丸山昭子 身を透ける風が吹くなり干鰈 布川武男 ※ 鰈・蒸鰈・干鰈 北海道や北陸沿…
雌伏 十五 法悟空 内田健一郎 画 (6043) 昼前から降りだした雨は、次第に雨脚が強くなっていた。 山本伸一は、佐久市の功労者宅を訪問するため、長野研修道場を出発した。 雨のなか、翌日の記念撮影のために、青年たちが県道沿いの空き地で草刈りをして…
≪2017年(平成29年)4月10日(月)≫(旧暦3/14)※新聞休刊日 魚島や雨ふりさうな葉のゆらぎ 対中いずみ 魚島をとほくに母の母らしく 大石雄鬼 鞆ノ津の魚島時の吹流し 和田照海 魚島や素足向け合ふ舟の上 堀 葦男 魚島の舟待つ犬は尾を立てて 辻田克巳 ※ 魚島 四ー…
≪2017年(平成29年)4月9日(日)≫(旧暦3/13) 白波と春日漂ふ荒れ岬 桂 信子 春の日の南中にあり千曲川 米島艸一路 春の日のぽとりと落つる湖のくに 岸田稚魚 母通る枯草色の春日中 飯田龍太 大いなる春日の翼垂れてあり 鈴木花蓑 ※ 春の日・春日・春日(しゅんじ…
≪2017年(平成29年)4月8日(土)≫(旧暦3/12) 枝すでに後悔のいろ春の夜に 中田 剛 並べ売る数珠も春夜の街の栄 西村公鳳 吾子あらず妻が春夜の冷えをいふ 川島彷徨子 春の夜のはたてにまはる燈台あり 篠原 梵 春の夜は指のとげさへうづくもの 林原耒井 ※ 春の夜…
雌伏 十四 法悟空 内田健一郎 画 (6042) 山本伸一は、入会三十二周年となる八月二十四日を、長野研修道場で迎えた。新しい決意で出発を誓い、真剣に勤行した。 昼過ぎには、青年たちと自転車で周辺を回った。戸田城聖が最後の夏を過ごした地を巡ること…
≪2017年(平成29年)4月7日(金)≫(旧暦3/11) 音もなく夢魔に添い寝の春の宵 わたなべじゅんこ 心うらぶれて春宵の人を看る 日野草城 春の宵腰の坐りし酒徳利 鈴木真砂女 飼犬につながれて居る春の宵 しおやきみこ 春の宵かもめホテルへ二歩三歩 津田このみ ※ 春…
雌伏 十三 法悟空 内田健一郎 画 (6041) 山本伸一の心からの願いは、皆が強盛に信心を貫き、幸福になることだけであった。 退転・反逆者や宗門僧は、創価の師弟を分断しようと、伸一が会合で指導したり、「聖教新聞」に登場したりできないように陰で画…
≪2017年(平成29年)4月6日(木)≫(旧暦3/10) 地に添うて鶏の一日春の暮 桂信子 憤死の塚 屠腹の塚の 春の暮 伊丹三樹彦 あはれとは生きの験の春の暮 野見山朱鳥 さみしくて桃子と遊ぶ春の夕 村山故郷 揺れ椅子の揺れやまぬ間の春の暮 細見綾子 ※ 春の暮 春の夕…
雌伏 十二 法悟空 内田健一郎 画 (6040) 田森寅夫は、歯を食いしばりながら信心を続けていくと、学校に給食のパンを卸せるようになり、また、外国人客も増えていった。さらに、大手の洋菓子店へも卸すことになり、彼の店は、軽井沢を代表する老舗のベー…
≪2017年(平成29年)4月5日(水)≫(旧暦3/9) 春昼の匙おちてよき音たつる 桂 信子 春昼や鍋に手のあり耳のあり 土肥あき子 春昼のすぐに鳴りやむオルゴール 木下夕爾 天地音なし春昼に点滴す 野見山朱鳥 春昼の絵皿より蝶出でて舞へ 朝倉和江 ※ 春昼(三春)・春…
雌伏 十一 法悟空 内田健一郎 画 (6039) 二十一日夜の懇談の折、山本伸一は、軽井沢支部の初代支部長・婦人部長を務めた田森寅夫と妻のタミとも語り合った。 寅夫は、一流ホテルで修業を積んだパン職人で、心臓病で苦しんでいたタミが信心し、元気にな…
≪2017年(平成29年)4月4日(火)≫(旧暦3/8) 暮れおそき草木の影をふみにけり 五十崎古郷 軽雷のあとの遅日をもてあます 水原秋櫻子 縄とびの端もたさるる遅日かな 橋 閒石 遅き日を焼け残るたび松の風 原子公平 生簀籠波間に浮ける遅日かな 鈴木真砂女 ※ 遅日・…
雌伏 十 法悟空 内田健一郎 画 (6038) 残暑の東京を発って二時間半、夜霧に包まれた軽井沢は肌寒かった。 山本伸一が長野研修道場に到着すると、地元の幹部や役員など、数人が出迎えた。会長を辞任したあと、「聖教新聞」などの機関紙誌で、彼の行動が…
≪2017年(平成29年)4月3日(月)≫(旧暦3/7) 永き日の暮るる方へと草の道 甲田鐘一路 懸垂の数競ふ子の日永かな いしだゆか 汐木より潮の香のたつ日永かな 児玉輝代 右巻きのソフトクリーム日永かな 柿沼盟子 巣造りの下手な番に日永かな 簗田たかゑ ※ 日永・永…
雌伏 九 法悟空 内田健一郎 画 (6037) 山本伸一は戸田城聖から軽井沢に招かれ、戸田の小説『人間革命』の感動を語りながら、深く心に期すことがあった。 ――戸田の『人間革命』は、彼の分身ともいうべき「巌さん」が、獄中で、生涯を広宣流布に生き抜く…
≪2017年(平成29年)4月1日(土)≫(旧暦3/5) 四月何を見てもつまらぬ燕の巣を仰ぐ 加倉井秋を 四月白樺の雨に燕の巣がにほふ 飯田龍太 四月モニュメント好きな市民と子雀と 後藤比奈夫 山葵田の水音しげき四月かな 渡辺水巴 水底のほっと明るき四月かな 戸田明子…
雌伏 八 法悟空 内田健一郎 画 (6036) 戸田城聖の小説『人間革命』では、主人公「巌さん」の人間革命の軌跡を主軸に、広宣流布に一人立った、師である「牧田城三郎」(牧口常三郎の仮名)の死身弘法の実践が描かれていく。 戸田は、一九五四年(昭和二…
≪2017年(平成29年)3月31日(金)≫(旧暦3/4) 沈みつつふくらむ夕陽八重櫻 野口香葉 海神に日輪淡し八重ざくら 斎藤梅子 八重桜逢ふ魔が刻を歩みけり 柴田白葉女 夜がくれば夜の冷えおくる八重桜 能村登四郎 ゆるやかに四肢緩みゆく八重桜 西田もとつぐ ※ 八重桜…