浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

清新/三十〈小説「新・人間革命」〉

 


清新/三十 法悟空 内田健一郎 画 (5855)


 山本伸一は、下北の青年たちと記念のカメラに納まり、皆に語った。
 「人生の本当の戦いは、いよいよこれからだよ。さらに十年後、いや二十年後、三十年後にどうなるかが勝負だ。今日、来られなかった皆さんに、くれぐれもよろしく!」
 そして、歩き始めてから振り返って言った。
 「どんなに離れていても、みんな、“わが弟子”だよ! 私は、そう信じています!」
 このメンバーは、自分たちを「下北会」と名づけ、その後も折々に集っては励まし合っていった。
 また、メンバーのまとめ役であった木森正志は、創価大学卒業後、大手企業に勤めたあと、故郷のために働きたいとの思いが日ごとに強くなっていった。そして、遂に、地元の教員となることを決断した。
 青森県の教員採用試験を受け、下北の小学校の教員となった。やがて校長も務め、地域に大きく貢献する一方、学会にあっても、県幹部などとして活躍していくことになる。
 メンバーは、それぞれが伸一との誓いを胸に、各地で人生の勝利劇を演じていった。
 始まりは、一葉の写真である。誰かに言われたからではなく、皆が誓いを込めて、あの写真を撮り、自主的に伸一に送った。決して、激励を期待してのことではない。
 もちろん伸一自身は、日々、すべての会員の真心に応えようと、懸命に奮闘していた。
 しかし、仮に伸一からなんの返事も激励もなかったとしても、メンバーは、写真を送ったことで、人生の師と定めた伸一と、心を結び続けてきたにちがいない。既に一葉の写真を送った時から、メンバーは、己心の伸一と共に、勝利の大海原に船出していたのだ。
 師弟とは物理的な触れ合いのなかにあるのではない。心に師をいだき、その師に誓い、それを成就しようとする、必死の精進と闘争のなかにこそある。そこに人生の開花もある。
 「人の目を喜ばせる花や実は、必ず地中に隠れている健全な根の力です」(注)とは、青森出身の教育者・羽仁もと子の洞察である。

 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 「生活の隠れたる部分」(『羽仁もと子著作集第二巻 思想しつゝ生活しつゝ(上巻)』所収)婦人之友社=現代表記に改めた。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)7月20日より転載】


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