浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

清新/二十三〈小説「新・人間革命」〉

 


清新/二十三 法悟空 内田健一郎 画 (5848)

 山本伸一の広布旅は続いた。
 清新な心で、新しい未来を開くために。
 一九七九年(昭和五十四年)一月十三日の午前中、彼は水沢文化会館の庭で、亡くなった同志を顕彰する記念植樹を行った。また、会館に来ていた子どもと相撲を取り、集って来た人たちと懇談するなど励ましを重ねた。
 そして、「お世話になりました。ありがとう!」と皆をねぎらい、青森へ向かった。
 車で北上駅に出て、十四時二十二分発の東北本線の特急「はつかり3号」に乗車した。
 出発して三十分近くが過ぎ、岩手飯岡駅を通過する時、十数人の人たちがホームで盛んに手を振っているのが見えた。
 伸一は、隣の席にいた、副会長の青田進に言った。
 「学会員だね。寒いのに見送りに来てくれて本当に申し訳ないな。皆さんの真心が胸に染みるね。風邪をひかなければよいが……。可能であれば御礼を伝えてください。
 ところで、今回、水沢には雪がなかったね」
 「はい。今年は珍しく暖冬で、まだ本格的に雪が降っていないそうです」
 「勤行会に集って来る皆さんのことを考えると、雪がなくてよかった。
 もし、雪が降り積もっていたら、私は雪のなかを歩いて、激励に回ろうかと思っていたんだよ。そうしなければ、北国で広宣流布の道を切り開いてくださっている同志の、本当の苦労を実感することはできないからね。
 どんな組織でもそうだが、物事を企画、立案し、指導していく幹部が、最前線で活動する現場の人たちの気持ちや実態がわからなければ、計画は机上の空論となり、現実に即さないものになってしまう。そうなれば、既に官僚主義なんだ。
 だから学会のリーダーは、絶えず第一線に身を置き、皆の現実と、苦闘、努力を肌で感じ、共有していくことだ。そして、号令や命令で人を動かすのではなく、自らの率先垂範の行動と対話で、皆を啓発していくんだよ。それが、広宣流布の指導者だ」

 

【「聖教新聞」2016年(平成28年)7月11日より転載】


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