浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

清新/二十九〈小説「新・人間革命」〉

 


清新/二十九 法悟空 内田健一郎 画 (5854)


 山本伸一は、かつての中等部員らを心から歓迎した。皆、十年後を目標に、誓いを立て、さまざまな苦難に挑みながら、精進を重ねてきたのだ。
 「よく来たね! みんな、必ず成長して集い合おうと、御本尊に誓ったと思う。そして、今日まで、その誓いを忘れずに頑張ってきた。それが大事なんだ。
 御本尊に誓ったこと、約束したことを破ってはいけない。決意することは容易です。しかし、実行しなければ意味はない。自分の立てた誓いを果たすことが尊いんです。そこに人生の勝利を決する道があるんだよ」
 これまでメンバーは、折々に集っては誓いを確認し、切磋琢磨してきた。この日、伸一を訪ねてやって来た青年の一人に木森正志がいた。彼は、創価大学に学び、四月から東京の大手企業に就職することが決まっていた。
 木森の家は貧しく、とても大学に進学できる家庭状況ではなかった。父親は出稼ぎに行き、母親は製材所に勤めながら、四人の子どもたちを育ててくれた。彼も中学時代から牛乳配達や新聞配達をした。氷点下の真冬、雪を吹き上げる寒風のなか、牛乳を配り始めると、指は感覚を失った。
 木森は、伸一から激励を受けて以来、“社会に貢献する人材になって期待に応えよう”と、固く心に決めていた。
 高校二年生になった年に創価大学が開学すると、“ぼくも、山本先生が創立した大学で学びたい”と強く思った。家が経済的に大変なことは、よくわかっていた。でも、意を決して、両親に頼み込んで許しを得た。猛勉強に励み、高校を卒業した翌年に創価大学に入学した。下北地方で初の創大生となった。
 東京で働いていた兄のアパートに転がり込んだ。土木工事等、アルバイトをしながらの学生生活であった。だが、“伸一のもとに集う十年後”をめざして、木森は、歯を食いしばりながら、自身への挑戦を続けてきたのだ。
 勝利者とは、自分に打ち勝つ、忍耐の人である。自らの誓いを果たし抜いた人である。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)7月18日より転載】


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