浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

小説「新・人間革命」

 

大山 九 法悟空 内田健一郎 画 (5969)

 鮫島源治は学会の副会長であることから、追及の矛先は会長の山本伸一に向けられた。
 宗門僧は、喧伝した。
 「鮫島発言に明らかなように、学会も、山本会長も、なんの反省もしていない」
 「宗門を誠心誠意、外護する気持ちなど、全くなかったのだ!」
 学会側が事態を収束させるために苦心し、誠意を尽くして努力を重ねてきたことが、これで水泡に帰してしまったのである。
 伸一は、宗門においては法華講の総講頭という立場であったが、宗門では、総講頭の辞任を勧告すべきであるとの声もあがった。抗議の文書を送ってくる僧もいた。
 さらに、三月末、法華講連合会が緊急理事会を開いて、伸一に対して総講頭の辞任勧告を決議。勧告書を送りつけてきたのである。
 檀徒となった脱会者らは、「山本会長は責任を取って辞任せよ」と盛んに騒ぎ立てた。
  
 満開の桜が、春風に揺れていた。
 四月二日は、第二代会長・戸田城聖の祥月命日である。恩師逝いて二十一年となるこの日、学会本部をはじめ、各県・区の中心会館で追善勤行会が営まれた。
 山本伸一は、理事長の十条潔や副会長の秋月英介、戸田の近縁者らと共に、東京・信濃町の学会別館で追善の勤行を行った。騒然としたなかで迎えた恩師の命日であった。
 しかし、戸田の構想をすべて実現してきた伸一の胸中には、青空が広がっていた。弟子として自身の来し方に、一点の曇りもなかった。心のなかの師と、常に晴れやかに向き合えてこそ、真正の弟子である。
 恩師が示した「七つの鐘」のうち、「第七の鐘」が、いよいよ鳴り終わる時を迎えようとしていた。広布の大河は、世界の大海原に注ぎ始めた。二十一世紀に飛翔する学会の盤石な基盤が築かれ、新段階に入るのだ。
 伸一は、広宣流布が進めば進むほど、魔の蠢動も激しくなることを覚悟しなければならないと、強く自分に言い聞かせた。

 

【「聖教新聞」2017年(平成29年)1月12日より転載】


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