浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

〈小説「新・人間革命」〉


清新/四十一 法悟空 内田健一郎 画 (5866)

 山本伸一は、青森県新春記念指導会で、こう話を締めくくった。
 「今はまだ、青森の冬は厳しい。しかし、凍てる雪の下で、既に若芽は萌え出る準備をしているんです。御金言のごとく、冬は必ず春となります。そして、風雪の辛さを知るからこそ、春を迎えた喜びは大きい。
 苦労に苦労を重ねて広宣流布の道を開いてこられた皆さんには、最も幸福になる権利があるんです。皆さんが幸福に満ちあふれた、希望輝く清新の春を迎えることは明らかです。どうか、御本尊の功徳に浴し、立派な人間革命の姿をもって、晴れやかな人生を送られるよう念願し、あいさつといたします」
 大きな、大きな拍手が広がった。皆、歓喜に頰を染め、瞳を輝かせながら、新しい出発の決意を固めたのである。
 伸一は、直ちに、会場の広間に入りきれなかった人たちのもとへ向かった。廊下で、ロビーで、参加者に声をかけ、握手を交わした。時として、体はもみくちゃにされた。しかし彼は、一人ひとりの同志の発心と人生の勝利を願って、全力で励まし続けた。
 さらに、夕刻には、オーバーを着て、毛糸の帽子をかぶり、小雪の舞うなか、会館の周辺を回った。あちこちに、何人もの学会員がいた。路上で激励の対話を重ね、そして、県幹部らとの懇談会に出席したのだ。
 一月十六日、伸一が東京に戻る日だ。雪はやんでいた。見送ってくれた青森の代表のメンバーに、彼は言った。
 「また、必ずまいります。その時には、奥入瀬の研修道場にも行きます。奥入瀬の滝のように、清冽な信心を貫いていこうじゃないですか。広宣流布の総仕上げを頼みます」
 伸一は、車中の人となった。
 窓の外を見ると、会館の庭から、雲に覆われた空に、色鮮やかな武者絵の描かれた大凧が揚がっていた。烈風を受け、悠揚と天に舞う凧は、青森の若師子の心意気を思わせた。
 ――青年よ、試練を友とせよ。どこまでも忍耐強くあれ。「艱難汝を玉にす」ゆえに。


【「聖教新聞」2016年(平成28年)8月2日より転載】


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