小説「新・人間革命」
源流 六十四 法悟空 内田健一郎 画 (5955)
グプタ副総長のあいさつを受けて、山本伸一は、今回のささやかな図書贈呈を起点に、滔々たる大河のごとき教育・学術交流の流れを開いていきたいとの決意を述べた。そして、寄贈図書の一部と百冊の贈書目録、記念品を副総長に手渡した。
このあと、講堂で、一行を歓迎する民族舞踊などの公演が行われた。学生と教員が一体となって準備にあたったものだ。
――自然を祝福するタゴールの詩が流れる。彼が創作した優雅な「タゴールダンス」や古典楽器シタールの演奏もあった。勇敢なる狩人の劇では、宇宙に内在する悪との激闘を表現するかのように、力強く青年が踊る……。
タゴールの詩は、インド民衆の魂の芸術的表出でもあった。人びとの喜怒哀楽の声は彼の知性の光を得て、普遍的な芸術へと昇華し、“永遠なるもの”と融合していく。詩聖の、苦悩する一人の人間への徹した愛は、ベンガルへの、全インドへの、さらに全人類への愛の光となって世界を照らした。
この舞台は、時に笑いもあり、涙もある、偉大なる“文化の巨人”の後を継ぐ大学にふさわしい、美事な総合芸術であった。熱演に温かい眼差しを注ぐ副総長、老教授たちの姿が、ほのぼのとした人間愛を感じさせた。
伸一は、感動の余韻さめやらぬなか、教員、学生らに深謝し、黄金の夕日に包まれたラビンドラ・バラティ大学に別れを告げた。
創価大学の創立者でもある伸一のこの訪問によって、創価大学と同大学との交流の道が開かれることになる。伸一は、友好の苗木を丹念に、大切に、根気強く育てていった。
訪問から四半世紀後の二〇〇四年(平成十六年)二月、同大学から伸一に、名誉文学博士号が贈られるのである。
また、この授与のために来日したバラティ・ムカジー副総長とは、その後、対談集『新たな地球文明の詩を――タゴールと世界市民を語る』を出版している。
たゆむことなき一歩一歩の交流の蓄積が、信頼と友情の花を咲かせる。
【「聖教新聞」2016年(平成28年)11月17日より転載】
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