浩洋子の四季

古季語を探して、名句・秀句を紹介します。

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

鶏頭/今日の俳句 ≪第2259号≫

≪2016年(平成28年)9月14日(水)≫(旧暦8/14) 鶏頭に日はさしながら雨の降る 臼田亞浪 鶏頭を三尺離れもの思ふ 細見綾子 身のなかに種ある憂さや鶏頭花 中村苑子 鶏頭をたえずひかりの通り過ぐ 森澄雄 燈台に咲き鶏頭の花低し 二階堂支草 ※ 鶏頭 古く日本に輸…

小説「新・人間革命」

源流 十一 法悟空 内田健一郎 画 (5902) 大河内敬一が、最初にインドに関心をもったのは、幼いころに、近所の学会員で、世界を舞台に活躍している創作舞踊家夫妻から、「インドはいいところだよ」と聞かされたことだった。やがて、インドのニュースな…

臭木の花/今日の俳句 ≪第2258号≫

≪2016年(平成28年)9月13日(火)≫(旧暦8/13) 花臭木こだまは山の中に栖み 窪田玲女 川舟へ臭木花咲く坂よけれ 波多野爽波 臭木咲く禅堂低き垣構へ 原田しずえ 臭木咲き藩主墓前の一区画 山本紅園 熊野道臭木もひそと花掲ぐ 田中君代 ※ 臭木の花・常山木の花 …

小説「新・人間革命」

源流 十 法悟空 内田健一郎 画 (5901) 山本伸一たち訪印団一行は、ニューデリーのアショーカホテルに宿泊した。 六日朝、辺りは靄に包まれ、空気はひんやりとしていた。緑の木々から流れる鳥のさえずりが、のどかな思いに浸らせた。 しかし、市街に出…

木犀/今日の俳句 ≪第2257号≫

≪2016年(平成28年)9月12日(月)≫(旧暦8/12) 木犀の香に昇天の鷹ひとつ 飯田龍太 地震をのがれ木犀の下我ありし 金子麒麟草 闇へ出づ木犀の香に包まれて 山本孝夫 木犀の香を負うてゐる男かな 小寺正三 山麓の百年の家銀木犀 坪内稔典 ※ 木犀・金木犀・銀木犀…

芙蓉/今日の俳句 ≪第2256号≫

≪2016年(平成28年)9月11日(日)≫(旧暦8/11) 白芙蓉しだいに灯恋はれけり 石橋秀野 松の間の芙蓉にそゝぐ朝日かな 野村泊月 競ひ咲く花にはあらず芙蓉咲く 三橋鷹女 雷消えてゆく白芙蓉花そろふ 田村八束 日々為すなし芙蓉と海の明るきに 多田裕計 ※ 芙蓉・花…

秋海棠/今日の俳句 ≪第2255号≫

≪2016年(平成28年)9月10日(土)≫(旧暦8/10) 秋海棠雨はくちびるより零れ 田村みどり 書を愛し秋海棠を愛すかな 山口青邨 秋海棠露のあかるさちりばめて 柴田白葉女 秋海棠母の遺愛の袱紗かな 浅井美子 杉並木秋海棠に朝日差す 浅田光蛙 ※ 秋海棠 中国原産の…

小説「新・人間革命」

源流 九 法悟空 内田健一郎 画 (5900) インド・デリーは、空いっぱいに星々が瞬き、上弦をやや過ぎた銀の月が、微笑みかけるように、地上に光を投げかけていた。 香港の啓徳空港を二月五日の夕刻に発った山本伸一の一行が、パラム空港(後のインディラ…

芭蕉/今日の俳句 ≪第2254号≫

≪2016年(平成28年)9月9日(金)≫(旧暦8/9) 脛高き少年芭蕉ひるがへり 栗生純夫 水霜にまつたき芭蕉広葉かな 川端茅舎 うちつけに芭蕉の雨のきこえけり 日野草城 伐り倒し水ほとばしる芭蕉かな 沢木欣一 更けゆくや芭蕉の雨を枕の上 太田鴻村 ※ 芭蕉 バショウ…

小説「新・人間革命」

源流 八 法悟空 内田健一郎 画 (5899) 故・周志剛理事長の家は、鉄筋コンクリートのアパートの五階(日本の数え方では六階)にあったが、エレベーターはなかった。 山本伸一は、創価大学の大学院生で、通訳として香港訪問に同行していた、周家の長男・…

草蜉蝣/今日の俳句 ≪第2253号≫

≪2016年(平成28年)9月8日(木)≫(旧暦8/8) 草かげろふ吹かれ曲がりし翅のまゝ 中村草田男 離れては又来てとまる草蜉蝣 藤間雅童 草かげろふのごとく居て良夜かな 飯田龍太 草かげろふ小月光に舞ひ出でにけり 森田 峠 僧行きて草かげろふをたたしめぬ 早野麦…

小説「新・人間革命」

源流 七 法悟空 内田健一郎 画 (5898) 九竜会館での記念勤行会が行われた四日の夜、山本伸一は香港本部長会に出席した。 彼は、参加者の近況や意見を聞きながら、一人ひとりに励ましの言葉を送った。 「広宣流布といっても、遠くにあるものではなく、…

蜉蝣(かげろふ)/今日の俳句 ≪第2252号≫

≪2016年(平成28年)9月7日(水)≫(旧暦8/7) 蜉蝣の火に入るいのち音となる 飯田素蘭 蜉蝣や針葉樹林はをとこの香 草村素子 豊年虫車燈に殖えて故郷近し 貝梅文平 蜉蝣とぶ三番叟の振袖へ 堀 古蝶 蜉蝣や手斧づくしの隠し部屋 渕上千津 ※ 蜉蝣(かげろふ) カゲ…

小説「新・人間革命」

源流 六 法悟空 内田健一郎 画 (5897) 香港滞在二日目となる二月四日の午後一時半、山本伸一は、九竜のビクトリア港近くにある九竜会館を初訪問し、香港広布十八周年を祝う記念勤行会に出席した。 九竜会館は商店街の中にあり、十四階建てのビルの四階…

蜻蛉(とんぼ)/今日の俳句 ≪第2251号≫

≪2016年(平成28年)9月6日(火)≫(旧暦8/6) ふるさとの日向の匂ひ群蜻蛉 金子つとむ 目札をもて行進はむ鬼やんま 三橋敏雄 事勿れ蜻蛉はとんぼおんぶして 丸山佳子 日暮れまで寝て蜻蛉となりにけり 星野早苗 青青と草の先端蜻蛉待つ 今瀬剛一 ※ 蜻蛉・とんぼ…

小説「新・人間革命」

源流 五 法悟空 内田健一郎 画 (5896) 香港会館前の公園で林一家を励ました山本伸一は、午後六時半から行われた、香港の各部代表者会議に出席した。会場は、十八年前、伸一が東洋広布の第一歩を印した時に宿舎とした、尖沙咀にあるホテルであり、食事…

蓑虫/今日の俳句 ≪第2250号≫

≪2016年(平成28年)9月5日(月)≫(旧暦8/5) 糸長き蓑虫安静時間過ぐ 石田波郷 倫敦に蓑虫住むや漱石忌 橋本風車 -の父よと鳴きて母もなし 高濱虚子 吹かれゐて蓑虫の蓑青まじる 能村研三 蓑虫や天の静かさ糸に吊り 村越化石 ※ 蓑虫 ミノガ科の蛾の幼虫。木の…

〈小説「新・人間革命」〉

源流 四 法悟空 内田健一郎 画 (5895) 林一家は子どもが六人おり、父親は運転手をし、母親は裁縫の仕事をしていた。住居は、三十平方メートルにも満たない公営のアパートである。 山本伸一は、林家の子どもたちとブランコで遊んだあと、両親に視線を向…

蟷螂(とうろう)/今日の俳句 ≪第2249号≫

≪2016年(平成28年)9月4日(日)≫(旧暦8/4) 病むわれに蟷螂すぐに身を構ふ 加倉井秋を 高足にかまきり歩き荒るる海 西村公鳳 金堂の扉のいろのいぼむしり 後藤夜半 枯色も攻めの迷彩枯蟷螂 的野 雄 子蟷螂生まれながらの身の構え 松永昌子 ※ 蟷螂(とうろう)・…

きりぎりす/今日の俳句 ≪第2248号≫

≪2016年(平成28年)9月3日(土)≫(旧暦8/3) 明けかかる高窓引くやきりぎりす 室生犀星 きりぎりす美味しきものを卓の上 村越化石 ひとりねのひるの底よりきりぎりす 桂 信子 きりぎりす繃帯よりもむずがゆき 八田木枯 きりぎりす枕の裏側つめたくて 寺田良治 …

小説「新・人間革命」

源流 三 法悟空 内田健一郎 画 (5894) 山本伸一が香港会館で懇談を終えて外へ出ると、数十人のメンバーが、彼の訪問を知って集まっていた。既に辺りは暮色に染まり始めた。 伸一は、「わざわざ、ありがとう!」と言って皆と握手を交わし、記念撮影をし…

竈馬(いとど)/今日の俳句 ≪第2247号≫

≪2016年(平成28年)9月2日(金)≫(旧暦8/2) 思ひ事闇へいとどを吹き返し 原子公平 夢殿にちよっとすんでたかまどうま 南村健治 絹いっぴきの姉よ軽さよかまどうま 若森京子 子規の間の笠つき電球いとど飛ぶ 木田千女 母の代の箒を持てばかまどうま 八染藍子 ※…

〈小説「新・人間革命」〉

源流 二 法悟空 内田健一郎 画 (5893) 山本伸一たちの乗ったジェット機は安定飛行を続け、台湾上空を過ぎて、香港に近づきつつあった。伸一は、名操縦の機長に感謝の思いを込めて、自著に句を認めて贈った。 「祈るらむ いざや幸あれ 翼びと」 その脇…

九月/今日の俳句 ≪第2246号≫

≪2016年(平成28年)9月1日(木)≫(旧暦8/1) 九月の地蹠ぴつたり生きて立つ 橋本多佳子 ひとり身の九月草樹は雲に富み 野澤節子 どの窓もいつか眠れる九月の夜 廣瀬直人 野にあれば九月の雲を朗読す 南村健治 少年の商才かなし九月尽 楠本憲吉 ※ 九月・長月・…

〈小説「新・人間革命」〉

源流 一 法悟空 内田健一郎 画 (5892) 離陸した搭乗機が雲を突き抜けると、美しい青空が広がり、まばゆい太陽の光を浴びて雲海が白銀に輝いていた。 山本伸一を団長とする創価学会訪印団一行は、一九七九年(昭和五十四年)の二月三日午前十一時、九州…